技術・海外・環境 ~塞翁が馬~

著者: 鈴木秀男 講演者: 高田 弘  /  講演日: 2013年11月08日 /  カテゴリ: 講演会  /  更新日時: 2013年11月25日

 

(公社)日本技術士会近畿本部登録 環境研究会 第61回特別講演会要旨

日時;2013年11月8日(金)1830分~2030
場所;大阪市 アーバネックス備後町ビル3階ホール

 

講演:技術・海外・環境 ~塞翁が馬~

 講演者:高田 弘氏 (公益財団法人地球環境センター(GEC)専務理事)

はじめに

過去の経歴を基に定性的な話が主体になります。

技術

(理系への動機)
理系に進んだ訳は、小2の時の田原先生が直方体の展開図を褒めてくれたこと、兄が購読していた科学朝日を読んでいたこと、高2の中頃にケミストリーに興味がわいたことなどです。

(身体の問題)
化学系で色弱の学生に対して門戸を開いていたのは国立では広大と京大などであり、母子家庭であったこともあり、距離の近い京大に進みました。

(対象テーマの選択)
今から思うと技術の世界でも波があります。1985年頃
  ①半導体とIT
  ②バイオテクノロジー
  ③環境
がありました。技術の長期的な動向の見極めは非常に大切だと思います。これからは無人機、人間の代替をする機械、自動操縦などをするロボット関連が世界中に広まると思います。

(守秘義務)
商社勤務時代に、あるサンプルをきっかけに守秘義務損害賠償の問題を経験しました。宗教が影響しているのか、日本人は契約にちょっとルーズであるという印象を持っております。

(個人のアンテナ)
今何が起こっているのか将来どうなるのか、社会動向の大きな波に乗るためにはアンテナを張っておくことが絶対不可欠です。

(ノーベル賞受賞者)
私はノーベル受賞者3人と知り合いです。福井兼一、ウォルター・ギルバード(遺伝子塩基配列決定方)、キャリー・マリス(PCR方)です。

海外

(滞在地での感想)
シドニー、ペルー、ドミニカに滞在しましたが、ホテルでないところで最低半年は滞在しないとその土地のことは判からないと言えます。豪州では自然条件の差(スケールの差)、南米では先進国との比較で人の質の違いを感じました。

(地域への知見)
ペルーでは社会環境に大きな差があり、また人には予想能力が掛けており、アングロサクソン・日本人とは違うと理解しております。

(他人への見方)
豪州では人を批判する場合、こういう面が悪い、こういう面が良いと言い客観的ですが、日本人はあの人は悪いと言い全人格を否定する言う場合が多い様です。日本人は客観的見方を身に付けるべきだと思います。

(階層社会)
日本社会は平等だと思います。アメリカは日本よりも階層社会です。南米では家の設計にまでも階層性が現れています。相続税が無いので金持ちは未来永劫に金持ちです。大学を卒業し就職する時にも階層性が現れ、金持ちの息子は大手企業の部長などで入社します。

(黒人への見方)
ドミニカは約8割が黒人です。優秀な黒人がかなりいます。白人が黒人を意識的に蔑視・差別化しています。白人の言葉に惑わされないようにする必要があります。

(語学)
南米でスペイン語が身に付きました。英単語の2/3はラテン語由来です。帰国後その理由を勉強しました。英語史を勉強され、英語の理解度を上げられると良いでしょう。

(アングロサクソンと日本人)
日本人はコンセプト設定などの場合、アングロサクソンに比べ大局観に欠けていると思います。日本人は大きく把握することが下手とも言えます。このことは書籍「日本を創った12人(堺屋太一著、PHP文庫)」にも出てくる石田梅岩の考え方(与えられたことを忠実にやっていれば結果も良くなる)を日本人が尊重したのが原因ではないかと堺屋太一は言っており、これも一因なのではないかと考えています。

環境

UNEP/IETCの誘致)
20
年前に鶴見緑地にUNEP/IETCを誘致し、その支援財団である地球環境センターができました。

JICAシニアボランティア)
ドミニカに2年いましたが、現地のJICA日本人職員6人は今ひとつだったという印象を持っています。

(日本の環境元年)
リオサミットが行われた1992年だと考えています。

ISO14001の場合)
17
8年前に通産省に欧州から手紙が来たところ、製品生産時の規格の担当部署は放置しました。ISO14001は概念の話であり、1年以上過ぎて回答を求められ、よく読んでみると環境概念のことであることが判りました。日本人は一面的にしかものを理解できない例と言えましょう。

CDMJCM
CDM
はすべての国、すべての業種を対象としたために書類作成が複雑となり、使い難くなりました。それで日本はCDMから脱退し、JCMを提唱し今年から予算も付けて、外務・環境・経産省の3省で開始しています。アジアのベトナム、インドネシア、ラオス、バングラデシュ、モンゴルの5か国とアフリカの3か国とは既に協定を結び、環境省は26の案件(11億円)を取り上げています。

(持続的開発?)
この言葉が取り上げられてから30年以上が経ちますが、環境は更に悪くなって居ると思います。持続的開発の継続で良いのでしょうか、対策が中途半端と思います。人間の欲望は常に膨らみます。持続可能性を維持していたら廃棄物は増えるし、更なる規制をしないとダメではないかと考えます。もっと大局的に考える必要があると思います。

(人口問題)
環境問題は人口問題と密接に関係します。人口が半分になれば環境負荷も半分になります。環境対策と少子化対策は両立しません、日本政府の政策もお笑いです。上智名大学名誉教授の渡辺昇一氏が人口問題を取り上げていますが、他の方は誰も何も言いません。世界的組織も然るべき人たちも何も発言しません。

おわりに

(心の持ち方)(アンテナを張る)(偶然9割・必然1割? →→ ~塞翁が馬~)
プラス思考、前向き、興味を持ち適度な緊を持ちアンテナを張ることが重要と思います。私の経歴を振り返ると、9割が偶然に支配され、必然が1割程度ではなかったかと理解しています。人生、正に「塞翁が馬」ではないでしょうか。

    

             講演会の様子                         高田 弘 氏

(文責 鈴木秀男、 監修 高田 弘)


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