エネルギーパワーバランスの変化

著者: 綾木 光弘 講演者: 石塚 幹剛  /  講演日: 2014年06月23日 /  カテゴリ: 講演会  /  更新日時: 2014年07月25日

 

公益社団法人 日本技術士会近畿本部登録環境研究会  7月講演会要旨

日時;2014年6月23日(月) 1830分~2030
場所;大阪市 アーバネックス備後町ビル 3階ホール

 

演題2 話題提供 エネルギーパワーバランスの変化

講講者:石塚 幹剛氏 (技術士/建設、LLPイーアイ技術士事務所)

 

日本のエネルギー供給体制は、海外の資源に大きく依存しており、新興国の需要拡大、地政的変化、資源価格の不安定化といった構造的課題がある。そういった状況を踏まえて、中長期的方向を示す新たなエネルギー基本計画が閣議決定された。ベースロード電源、ミドル電源、ピーク電源に区分され、原子力はベースロード、火力はミドルに位置付けられた。

原発はベースロード電源として再稼働の方向が示されているが、規制委員会任せで国民的コンセンサスが得られていない。原発依存に対する安全性確認、確保規模、核燃料リサイクル、最終処分の課題も解決できていない。
一方、再生可能エネルギーは導入加速の方向であるが、安定的な基幹エネルギー源とするには供給量、価格、送電網の確保、等の課題がある。電力供給では東西間の電力融通・供給に必要なインフラ整備が望まれる。
原発停止に伴い、LNG輸入量増、電力料金高騰等により、我が国企業の国際競争力の低下、富の流出、貿易赤字増等、我が国は低資源国の宿命を抱えており、省エネ・節電・資源の有効利用が次世代にツケを残さないためにも大切である。

エネルギー関連の国際的話題として、中国の南シナ海進出、天然ガス供給でロシアと中国の結びつき、ホルムズ海峡の安全運航確保等、安全保障に係る事案が見られる。
北米のシェール革命により、中東の化石燃料が欧州に、ロシアの天然ガスが中国にと流れ、国際エネルギーパワーバランスが大きく変化しつつある。我が国にとっては、供給先の多様化・価格の低廉化、等メリットも大きい、と考えられる。動向に注視が必要である。

IPCC3作業部会では、気温上昇2℃以内抑制のためにCO2排出量の大幅削減、火力発電の石炭からLNGへの切り替え、CO2回収・CCS技術を使わない発電所は今世紀末までに全廃が必要と提言している。
今後の日本は、原発の扱い、電力・エネルギーの安定供給、戦略的削減目標の策定、地球環境保全における国際協調の在り方を含め、山積している課題に対応した早急な行動が求められている。

質疑応答

Q 原発が稼働しなくても、今夏の電力供給は計画停電等の問題はないか。

→ 関電管内では、今夏は初めての原発ゼロの夏であり、旧式の火力発電所のフル稼働、他社からの融通や自然エネ発電事業者からの買い取りで需要を賄う計画であるが、原発2基相当分(236kW)の省エネ・節電による需要抑制を見込んでいる。
それでも余裕率は3%ぎりぎりの状況であり、専門家によると通常は事故等への対応のため67%の余裕率が必要とのことである。軽微な事故でも発生すれば逼迫事態が発生する可能性があり、安定供給のためには消費者の節電・省エネ行動は不可欠な状況といえる。

      (文責 綾木光弘、監修 石塚幹剛)


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