途上国における3Rの課題

著者: 苅谷 英明 講演者: 山本 攻  /  講演日: 2014年09月08日 /  カテゴリ: 講演会  /  更新日時: 2014年09月25日

 

公益社団法人 日本技術士会近畿本部登録 環境研究会  65回特別講演会要旨

日 時:平成2698日(月)午後630分~830
場 所:アーバネックス備後町ビル3Fホール

演題:途上国における3Rの課題

演者:山本 攻 工学博士、技術士(衛生工学)(株式会社エックス都市研究所技術顧問)

 

1.社会の発展と環境負荷

1) 社会発展と環境負荷

環境クズネッツ曲線はSOxでは曲線に従うとされているが、CO2では曲線に従わないという異論がある。ただ、負荷が増大する時期を通らずに持続可能な社会に発展することが必要である。しかし、社会の発展段階で技術移転ができるレベル、難しいレベルがある。例えば、GDP 3,000ドル/人以下であれば、焼却炉の設置は難しい。

2) 廃棄物発生を歴史的に見て

大阪市の廃棄物発生量と製品出荷額等は1900年からこれまでを時系列に見ると、よく連動する。
1960
年頃までは「公衆衛生の時代」で、衛生的見地から不完全な炉ではあるが廃棄物の焼却を目指した時代であった。
1960
年からバブル経済の始まる頃までは「環境衛生の時代」で、廃棄物処理施設からの公害防止が課題となり廃棄物処理法が制定されたりした。また、このころに石油危機もあったことで資源の有限性が注目され、工業化社会以前では一般的であったリサイクルの話が復活した時代でもあった。
バブル経済以降の現在は「資源制約の時代」と言われている。また、循環型社会形成推進基本法が制定された。

2.3Rs

1) 3Rsとは

3Rsとは、ゴミを、ReduceReuseRecycleすることである。
生産→消費→廃棄→リサイクルの流れで、資源は有効活用される。一方、この4つの全てにおいて、エネルギーを消費して行われる。資源はリサイクルできるが、エネルギーはリサイクルできないことを念頭に置く必要がある。
エネルギー面から3Rsを考慮すると、Reduce(そもそもゴミとなる量を減らす)、Reuse(エネルギーをあまり使わないで市場に戻す)、Recycle(エネルギーを使うがモノを循環させて、処理処分や資源採取のためのエネルギーの消費を減らす)。また、資源消費面から考慮すると、枯渇性資源(鉱石・化石燃料)の消費量を減らす必要がある。

2) 循環型社会

Reduceを実現するためには、製品・サービスの省資源化・長寿命化を検討する必要がある。また、Reuseにおいても、リユースが容易な製品仕様、システム構築、製品市場の創設・拡大が必要となる。一方、Reduceの難しさとして、現在の消費構造を変えて、モノを長く大切に使う社会とする必要がある(ReuseRecycleは、とりあえずモノを捨てる社会)。

循環型社会形成の評価として、資源生産性(=GDP/天然資源等投入量)、循環利用率(=循環利用量/(循環利用量+天然資源等投入量)、最終処分量の3つの数値目標を定めている。このうち、循環利用率はリサイクル率とも言われているが、リサイクルの取組は進んできており、無理して循環利用率を向上する必要はないというのが最近の社会の考え方である。また、この循環利用率は達成しそうである。

3.途上国における3Rsの課題

1) 一人当たりの収入とリサイクル活動の関係

収入とリサイクル活動には一定の関係が見られる。収入が上がるにつれて、一定の段階までリサイクル活動が活発になる。これは有価物から生活の糧を得る人が増えてくるからである。さらに収入が上がると、一旦、リサイクル活動が停滞する。これは他への就職機会が増えてくるからである。更に、収入が増えると生産者や消費者がリサイクル費用を負担することでより活動が活発になる。

2) 途上国でのリサイクルの課題

日本ではリサイクルが法制度化されているが、途上国では収入が少ないことから法制度がなくても生活の糧のためにある一定のリサイクルが行われる。
途上国では廃棄物に関するデータすら十分に把握できていない。リサイクル可能物は費用負担の仕組みがないのでほとんど把握されていない。
処分場に、食料や有価物を拾う人々が集まり、スラムが形成されていく。有価物を回収するために廃棄物を焼くことで常に処分場は煙が発生している。
廃棄物を拾う人をwaste pickerと言うがそれなりに組織化されており、搾取する者もいる。

3) 途上国での3Rsの難しさ

Waste Pickerは誰でもなれ、低所得者層にはそれ以外に適切な就労機会がない
経済が発展してくるとより良い就労場所ができてくるため、Waste Pickerは減る。
ただし、リサイクルするための人件費を負担できるほど経済的余裕はない。
リサイクル可能物の回収ルートが確立していない。また、リサイクルコスト負担の仕組みができていない。

Q&A

Q1:環境グズネクツ曲線の図において、GDPが高くCO2排出量が低い国はどこか。

A1:ヨーロッパの国と考えられる。

Q2:国連等で、途上国のリサイクルを援助するような国際的な取り組みはないか。

A2:日本は、3Rイニシアチブという取組みをアジアで促進させている。EUでは、NPO等がWaste Pickerをやめさせて、就業の機会を持たせる取組みをしている。ただし、Waste Pickerを組織化している場合や、国全体がLowly incomeであると推進が難しい。

A3:廃棄物の越境処理は、日本のような処理技術がある国で処理するのは有効である。日本から途上国に越境させるのは、不法投棄につながるのでよくない。

コメント

リサイクルの観点から、途上国の資源有効化に向けた取り組みの現状と課題について解説いただきました。
途上国は、日本のような先進国と異なった課題があり、同様な取組みを推進するのは難しいということが分かりました。

(作成 苅谷英明)

       


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