廃プラスチックのリサイクルと化学物質による健康被害について

著者: 宮西 健次 講演者: 鍵谷 司  /  講演日: 2014年12月06日 /  カテゴリ: 講演会  /  更新日時: 2015年01月15日

  

近畿本部 衛生工学部会・近畿本部登録 環境研究会 合同講演会 要旨

公益社団法人 日本技術士会 近畿本部 衛生工学部会 第6回 例会
公益社団法人 日本技術士会 近畿本部登録 環境研究会 第67回 特別講演会

日時:2014126日(土)1345分~1650
場所:大阪シティアカデミー 第4会議室

 

講演2 廃プラスチックのリサイクルと化学物質による健康被害について

講演者:鍵谷 司氏(技術士:環境、建設、衛生工学部門)

1.日本の廃棄物処理、リサイクルの法体系

環境基本法を基本法規とし、その下に循環型社会形成推進基本法があり、3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進と廃棄物の適正処理が謳われている。平成24年度の一般廃棄物は約4523t発生し、最終処分量としては約465tとなっている。

2.容器包装プラスチックのリサイクルについて

容器包装リサイクル法では、プラスチック容器はPETボトルとその他容器包装に分かれ、指定法人を通して、再商品化委託されるが、その時の委託費は、1tあたり、PETボトルで3400円、その他の容器包装で57000円と大きく開きがある。この、その他の容器包装には、ポリバケツ等、容器包装ではないプラスチックは含まれない、容器包装ではないプラスチックの分別除去、容器包装廃棄物の成分分別に手間がかかり、自治体の負担が大きい。

3.廃プラスチック取扱施設の化学物質問題と対応について

廃プラスチックをごみ袋に入れておくと自己酸化分解により有害な化学物質が生成し、微量蓄積する。さらに縮するとプラスチックの分子が切断して揮発性化学物質が生成し、残存したモノマ-等と共に排出される。なお、施設からの排気成分としてアルデヒド類等の各種炭化水素類が検出される。


廃プラスチック不燃ごみの減容施設である杉並中継所では、稼働当初から周辺住民に湿疹、頭痛、咳などの健康被害を訴え、公害等調整委員会の裁定では、中継所の操業が健康被害に結び付いたとされた。VOCの成分としては、数千万種類も存在するといわれる中で原因物質の特定を行わずに因果関係を肯定できる、とみなしたわが国初の裁定であった。


寝屋川の廃プラスチックリサイクル施設では、発生濃度の高いと考えられる箇所の排気は活性炭処理を行っていたが、稼働直後から周辺住民の健康被害が発生したと言われている。本件では、住民から施設の運転差止請求は、棄却されているが、実験的には、圧縮処理時のVOC発生は確認されている。活性炭の破過管理や、全排気の処理に加え、光触媒フィルターとの併用の有効性も、演者としては主張したい。そして、種々雑多な種類のプラスチックの混合物である、「その他の容器包装」は、マテリアルリサイクルよりもサーマルリサイクルするべきでは、と考える。

Q&A

Q この2か所で特に被害が出たのは何故か?

A 地形的に窪地で、逆転層ができ、空気が滞留しやすい環境だったこともある。ただ、逆転層ができても、濃縮されることはないはず。排気側の対策が常時十分なされていることが大切。

Q 作業者の健康被害はなかったのか?

A ない、とされているがすべての作業員について調査できているわけではない。それなりの曝露対策などしたうえで、健康被害が出ていない、ということかもしれない。

(文責 宮西 健次、監修 久鍵谷 司)


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