食品のゼロエミッション化に向けて

著者: 綾木 光弘 講演者: 野村 幸弘  /  講演日: 2015年04月24日 /  カテゴリ: 講演会  /  更新日時: 2015年05月27日

  

公益社団法人 日本技術士会 近畿本部登録 環境研究会 会員講演会要旨

日時;2015年4月24日(金)1900分~2030
場所;大阪市 アーバネックス備後町ビル3階ホール

講演2:食品のゼロエミッション化に向けて

講演者:野村幸弘 技術士 (農業部門)

はじめに

食品会社にて長年研究を行ってきて、食品製造メーカーの立場で、製造過程での廃棄ロスをどうすれば減らせるかという命題にも立ち向かってきた。本講演では、食品のゼロエミッション化に向けて、そうした経験から対応してきた具体例について述べる。

講演内容

「ゼロエミッション」という概念が導入されたのは、世界的に地球温暖化や廃棄物による環境問題への具体的な取組みの必要性が理解されだし、廃棄物ゼロの実現に向けて国際連合大学が提唱した構想の中からである。
ところで、食品の製造加工において、原材料や加えたエネルギーを100%完璧に食品に変えることは不可能である。必ず食品以外の廃棄物やエネルギーの損失が生じる。食品のゼロエミッション化には、次が大切である。

①廃棄物である残渣(廃棄される製品も含む)を極力出さないような製造への取組み
②発生する残渣を如何に有効利用して高付加価値のある製品を生み出す取組み

今回は、①の取組みに絞って、その取組みの中でも
ⅰ)残渣を出さない製造方法を目指すという方向ではなく、
ⅱ)食品の製造、加工、流通時に設計品質から外れた製品が製造されることによる廃棄ロスを如何になくすかという観点から解説する。

上記のⅱ)についてもう少し具体的に述べると、「製造基準書に準じて製造していても、設計品質から外れた製品が製造されるケースが多々ある。
そのようなケースに対して、製品を市場に出荷するまでに如何に解決して、製品の廃棄をなくしてゼロエミッション化に繋げていくか」という主旨で説明を行う。そのような見方は、当たり前のことであるが、これまでの経験からみて、あまり関心が払われていないようである。
今回は、下記の3つ事例をもとに発売日までに課題を解決して対応してきた経緯について説明する。

・実験室レベルにおいて設計品質を満たしたものが得られたので、それを工場の実ラインに移行して製造したところトラブルが発生した事例 (レトルトカレーの粘度低下)

・工場で製造された商品が、設計品質を満たしているという判断に立って発売したところトラブルが発生した事例 (粉末スープの保存中の核酸系うまみ調味料の低減)

・製造・加工時点で発生したトラブルの事例 (漬物や辛明太子の製造中での核酸系うまみ調味料の低減)

上記の課題等に対して対応することで、今後は、製造過程での製品の廃棄をなくしてゼロエミッション化に繋げていきたいと考えている。

まとめ

食品の製造において、
食品の基本設計 → 実験室レベルでの試作検討 → 実ラインでの製造 → 流通・販売
という流れにおいて、各過程では想像もしなかった設計品質から外れた製品が製造されることが往々にしてある。
その時に、科学的に原因を究明することにより多くの知見が蓄積され、その知見や技術を活用することで食品のゼロエミッション化に貢献できると考えている。

                       (文責 綾木光弘)

(監修 野村幸弘)

   


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