バイオマスは地球を救う

著者: 鈴木 秀男、西島 信一  /  講演者: 濱崎 彰弘 /  講演日: 2016年4月18日 /  カテゴリ: 環境研究会 > 講演会  /  更新日時: 2016年05月20日

  

公益社団法人 日本技術士会近畿本部(登録) 環境研究会 会員講演会 要旨

日 時:平成28418日(月) 午後650分~830
場 所:アーバネックス備後町ビル3Fホール

演題2:バイオマスは地球を救う

-国際協調によるバイオマスエネルギーの開発の提案-

講師:濱崎彰弘 技術士(機械部門、総合技術管理部門)、公害防止管理者(水質1種)

1. 微細藻類のバイオリアクター開発

バブルの時代Japanマネーは宇宙の土地開発も視野に入れた。筆者らは、地球の生態系をモデルにCELSSClosed Ecological Life Support System閉鎖生態系生命維持システム)の開発に従事し、その中で、藻類を利用したCO2O2のガス交換を行う高効率バイオリアクターを開発した。藻類の光合成曲線、及び、藻類の吸光特性を考慮して、バイオリアクターの光合成速度を算出する手法を導出した。

扁平フラスコのような培養液を片面照射する培養槽のO2の発生速度、及び、藻類生産能力を計算した結果は、実際に培養槽で計測した結果と良く一致していた。実験、及び、計算により、扁平培養槽の最大光合成効率(藻類の化学エネルギー/光エネルギー)は培養槽の水深によらず一定であり、底部の照度が光合成曲線の光補償点(呼吸速度と光合成速度が等しくなる照度)で最大になることを示した。

2. 大気中CO2濃度増加とバイオマスによる増加の抑制

-1に大気の炭素収支を示したが、大気へは年間3.3Gt-Cの蓄積があることが分かる。

  -1 大気の炭素収支

3. バイオマスによる大気のCO2濃度上昇抑制

熱帯、温帯林の面積を1Gha=10km2(日本38km2の約1/4)増やした場合の炭素固定量、及び、年間炭素固定速度(生産量)を次に計算する。炭素固定量は、222G-Cとなり、60年分(3.3Gt-C/年×60)位の排出量を固定できる。年間炭素固定速度は、5.37Gt-C/年と、化石燃料からの大気放出量5.5Gt-C/年とほぼ等しくなる。

    
      表-2 バイオマスの量、密度、及び、生産速度   樽谷、「地球環境科学」朝倉書店

4. バイオマスのエネルギー利用

バイオマス(バイオエタノールや植物油など)のエネルギー収支比(利用できるエネルギー/バイオマスエネルギーを生産するために消費するエネルギー)が25であるのに対し、薪は2030と大きい。
この理由は次の2点である。
①薪は収穫したバイオマスを全てエネルギーに利用できるが、バイオエタノールや植物油は一部しか利用できない。
②薪は樹木の栽培や伐採加工に消費するエネルギーが、バイオエタノールや植物油の原料となる作物の栽培や燃料転換に消費するエネルギーに比べて小さい。

5. 木質ペレットの大規模発電への適用

木質ペレットは石炭よりも発熱量が小さいながらも、灰分、S分が1/10以下と環境に優しい。しかし、石炭に比べて比重が軽く、ペレットの粉塵は紙屑のように舞い上がるため粉塵爆発しやすいので、石炭から木質ペレットに燃料転換する際は、防爆への配慮が重要である。

  -3 石炭と木質ペレットの比較

6. 国際協調によるバイオマスエネルギーの開発

1Gha=10km2の森林からバイオマスエネルギーを生産し、全世界的に利用するには、液体燃料を製造・利用するシステムで、1km2前後の森林利用規模のものを国際協調により、全世界に10か所以上作ることを提案する。

    
      4 森林バイオマスの生産と利用

7. 最後に(持続的な発展のために)

成長の限界を突破し持続的な発展のために、システムの実現に向け努力し、更に微細藻類を用いた食料増産システムの開発を進めたいのでご賛同頂ける方を募ります。

 

本講演のpptは日本コスト工学会ホームページhttp://jscpe.org/ からダウンロードできます。

Q&A

Q:表-1では固定と排出がバランスしている様に見えるが、人工的な排出を考慮したらどうなるか?

A:表-1の最下段化石燃料燃焼で排出が5.5Gt/年増加しており、表-2に示すように熱帯、温帯林によって1Gha10k㎡増やすと222Gt-Cの固定が可能であり、60年分位の排出量を固定できる。生産速度は、5.37Gt-C/年と、化石燃料からの大気放出量とほぼ等しい。

Q:先ほどの説明で、炭素の排出と固定がほぼイーブンとのお話でした、そこでアリゾナ州で行われているバイオスフィア2などの実証試験と、先ほどのお話では1万k㎡を10個作るというお話でしたが、もっと小さくしていくと例えばバイオスフィア2での実証試験でその先鞭がつけられるのではないかと思ったのですが、その辺の関係について説明願いたい

A:バイオスフィア2では,閉鎖系で長時間安定して生活できるという事で実証試験をやったが計算外の微生物の働きで大気中のCO2濃度がドンドン増えてうまくいかなかった。実際に生態系を組み込んでシステム化をするところの難しいところがその辺にあるのかと思っている。
人間が環境を操作するのはかなりリスクがあると考える。そう言う意味で、バイオスフィアで実証試験を行う事が、そのリスクを下げていくのに必要な事と考えます。

コメント

本日は、お二人に貴重な講演をいただきありがとうございました。
濱崎彰弘さんの講演は、なかなか壮大な構想で、お話しについていくのが精いっぱいでした。

(作成 鈴木秀男 西島 信一  監修 濱崎彰弘)