ガラスびんの出来るまで

著者: 富田 康弘  /  講演者: カテゴリ: 一般技術  /  更新日時: 2008年11月04日

ガラスびんの出来るまで

20051011日  富田 康弘

 

1.はじめに

  ガラスは、紀元前数千年の昔に発見されて以来、装身具、美術工芸品、食器、びん、窓ガラス、自動車のフロントガラス、ブラウン管、レンズ、フャイバーグラス、グラスウール、ニューガラスなど色々な用途に使用されて来ました。

  今回は、「ガラスびんの出来るまで」をテーマにガラスびんの一般的なことをご報告致します。

 

2.ガラスの歴史

  ガラスの歴史については、未だ結論が出されていないようですが、一般的には紀元前数千年前のメソポタミアかエジプトで、当時は、王族の装身具に使用されていたようです。

  ローマ帝政時代に、鉄パイプの先端に溶けたガラスを水飴のように巻き取って丸くし、風船のようにふくらませる「吹きガラス技法」が発明され、ローマン・グラスなどに見られる大量生産が可能になりました。

  このころ窓ガラスとしてガラスが使われた形跡が、ベスビアス火山の爆発で有名なイタリアのポンペイのフォロー街「広場浴場」の丸天井窓枠から発見されています。

  この後、ビザンチン帝国で開発されたステンドグラスなどへと普及していったようです。

  1516世紀になって、イタリアのベニス共和国でベネツア・グラスの最盛期で、この頃作られたガラス器具は、多種多様で食器は勿論、シャンデリアやランプなどあらゆるものに及んでいました。

この頃、1507年ダル・ガロ兄弟が水銀を使ったガラス鏡を発明し、1682年完成したベルサイユ宮殿の鏡の間は、この技術職人のフランスへの引き抜きで出来たとされています。

  産業革命の技術革新を経て、板、容器、繊維などへと分業化が進み、20世紀になり技術は、アメリカで大量生産へと機械化されて行きました。

 

3.日本のガラスびん業界

  日本のガラスびんの歴史は、工業規模で生産を始めたのは、1876年明治政府によって設立された工部省品川硝子製造所で、まだ人口吹きであった。

  その後、1916年日本硝子工業株式会社が設立され、米国オーエンスから特許権を取得してびんの製造を始めた。この後山村製壜所などもリンチ式などを導入全自動製壜機による製造に発展していった。米国ハートフォード社が発明したISマシンは、旧来のロータリー式とまったく異なる形式の機械で、1961年に日本に輸入され現在では、主流となっています。

  ’05年現在、日本ガラスびん協会の正会員企業は、石塚硝子株式会社、第一硝子株式会社、東洋ガラス株式会社、日本耐酸壜工業株式会社、日本山村硝子株式会社、及び磯矢硝子工業株式会社の6社で、2004年度のガラスびんの出荷状況は138万トン(72億本)であった。

  残念ながら需要は、PETボトルなどに押されてここ数年下降トレンドであったが、この数値で歯止めがかかったと日本ガラスびん協会では、見ているようです。

 

4.ガラスびんの出来るまで

  ガラスびんの主原料として、珪砂、ソーダ灰、石灰石、カレットなどで副原料として、清澄剤、着色剤、消色剤などが使用されます。

  これらは、調合設備で自動調合され、溶解炉へ投入され、溶解室で約15001600℃に加熱され溶かされます。

  溶けたガラスは、作業室で成形に適した温度約800℃にすると同時に、均質なガラスにします。

  ここからフィーダーを通して各製壜機(ISマシン)にゴブとして供給します。

 ゴブは、一旦粗型で大まかなびんの形状に成形され、仕上型に移されびんの形状が出来上がります。

  この機械には、3040丁の粗型、仕上型を装着してあり、1分間にドリンクびんで400500本のびんを生産しています。

  成形されたびんは、そのまま冷却すると割れてしまいますので、コンベヤーで運ばれ徐冷炉で約600℃(歪点)にして徐々に常温まで冷やして成形時の歪を取り除きます。

  後、コーテイングなどを施して傷を付きにくくして検査工程を経て、包装されて出荷されます。

 

5.ガラスびんと環境

  日本ガラスびん協会は、CO2排出量削減に関し、色々な取組を行っています。

 (1)カレット利用率の向上

   カレット使用比率の向上により、石灰石、ソーダ灰等の原料の減少及び溶融時の燃料の減少に伴い、CO2排出量の削減につながるので、ガラスびんリサイクル促進協議会を設立し、活動を展開した結果、1999年度に80%の大台を超え、2004年度は90%となっています。現在、容器リサイクル法では、白(透明)、茶、その他の色に色分けして回収していますが、その他の色のカレットの用途開発が問題です。

 (2)エコロジーボトルの生産

   その他色カレットをそのまま溶かして作ったびんで、カレット90%以上 

  を使用しています。私たちの身のまわりで、ワインやウイスキーや飲料

  のびなどに採用されています。

  ’04年度は、約1億本と年々増えてきています。ラベルにさりげなく「エ

  コロジーボトル」と表示してあります。

  混色カレットを使用したびんの色調に関する社会的認知を如何にして、

  確立するかが問題です。

 (3)超軽量びん

    ガラスびんを軽量化することで、原料、燃料の使用量を減少し、CO2   

  を削減できます。

    びん容量とびん重量を関数で求めレベルⅠからⅣ段階に分け、レベル

  Ⅳ以下を超軽量びんと称しています。

  レベルⅣの場合1000mlは、340g以下の重量で、普通のびんは、680

  ですから軽くなったと言えます。

 (4)リターナブルボトル(Rびん)

    リターナブルボトルは、リユースに適した容器でヨーロッパでは盛んに 

  使用されています。最近又、日本でも少しずつ増えてきていますが、洗

   びん設などの関係で限られています。

   ヨーロッパでは、リユースのためのデイポジットなどの政策が進み浸透

   しているようです。

   最近日本でも「南九州における900ml茶びん統一リユースシステムモ

   デル事業」(環境省)などの取組などもあります。

 

6.さいごに

    ガラスびんは重い、割れるなどの欠点がありますが、健康面、清潔面や環境の面では他の容器に追随を許しません。

アメリカでは、ベビーフードなどはガラス容器が普及しています。

ヨーロッパでの、リユースのためのデイポジットなどの政策については

前記しました。

環境面でも原料は砂で、砕けば砂に戻ります。リユース、リサイクル

面でも優等生です。

これを機会にガラスびんの良さを見直して戴いて、一本でも多くのガラ

スびんを使用して戴けると幸いです。

                                        以上

              文責:TOMIT@環境コンサルタント富田 康弘


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