活性炭とバイオ技術の組み合わせによる環境浄化技術の開発

著者: 上田 泰史  /  講演者: 川越 大樹 /  講演日: 2017年2月6日 /  カテゴリ: 環境研究会 > 講演会  /  更新日時: 2017年02月26日

 

(公社)日本技術士会近畿本部登録 環境研究会 第78回特別講演会要旨

日時:201726日(月)1830分~2000
場所:大阪市 アーバネックス備後町ビル3階ホール
 

講演:活性炭とバイオ技術の組み合わせによる環境浄化技術の開発

  -油汚染土壌汚染対策工法「OIL BACT法」と「空気浄化緑化技術」-

講演者:川越 大樹 技術士(総合技術監理部門・生物工学部門)
    ダイワハウス工業株式会社 総合技術研究所 フロンティア技術研究室

 

1.ダイワハウス工業株式会社紹介

1955年創業、社員14621人、売上高1兆6千億円
創業者石橋信夫氏の言葉この世の中に必要とされる会社になれ」を実践し、ハウスメーカーから総合生活産業企業に発展してきた。
奈良市のダイワハウス総合研究所には石橋信夫記念館もあり、申し込みで見学可能である。

2.土壌浄化技術の開発背景

現在給油所は年間1500店前後が廃業に追い込まれており、廃業に伴う跡地の油汚染が問題になっている。
油濃度による土地売買に支障があり、油汚染(油臭、油膜)の除去が大きな課題である。
この対策技術として活性炭と油分解菌の組み合わせ技術がOIL BACT法である。
  OIL BACT工法は、Bioremediation and Activated Carbon Technique for OIL contaminationの略。

3.オイルバクット工法の開発経緯 

油土壌汚染は現状では掘削除去が主流であるが、これに代わる技術として「吸着・脱臭」を行う活性炭利用が有効である。100種類以上の活性炭を評価して活性炭のOH-基の多さや表面積の大きさから油除去効果の高い活性炭を選定した。

活性炭を用いる際には以下の2つのリスクがある。

リスク① 土中埋設金属腐食(サビ)の問題
リスク② セメント固化剤からの六価クロム溶出問題(セメントは原料由来のクロム類含有)

六価クロムの試験として2つの試験を実施した。

①材齢7日の供試体を用いた六価クロム溶出試験
②乾湿繰り返し負荷による六価クロム溶出耐久性試験

土壌の油分を迅速かつ低コストで除去するための開発目標値を以下に定めた。

品質  :油濃度1000mg/kg-soil(0.1%以下)
コスト :¥15,000/以下(施工費含む販売価格)
浄化期間:2か月以内

バイオ浄化は下水処理で活用されており、微生物や植物の働きを利用して有害物質を分解することにより汚染土壌、地下水等の浄化を図る技術である。バイオ浄化に着目した分解菌は立命館大学保有の石油分解菌2菌株を選定した。
  菌1: Rhodococcus spNDKK6株
  菌2: Gordonia sp NDKY76A

立命館大学保有菌の優位性を確認する実験を行い、技術的提案として「リン成分種類・量・最適化」「窒素成分その他の栄養分の簡素化」「油濃度を基準とした窒素・リン成分比率の最適値設定」を行い、技術的成果として油分解効率26%向上、材料コストを1万円/から2,200/ に低減できた。

油臭、油膜を活性炭で解消し、油濃度をバイオ浄化で分解する技術として、2014910日に「地盤改良に関わる技術認証制度」技術評価第1016号を取得している。
  プレスリリース(20141030日)し、産経新聞、読売新聞、朝日新聞に掲載された。

4.オイルバクット工法の特徴と実績

OIL BACT工法は油臭・油膜を迅速に解消でき、幅広い油種に対応し分解速度も速い。他社技術と比較してもガソリンの消臭率や機械油の分解率でも優位性がある。一方、OIL BACT工法の弱点として、「処理土壌の色が黒くなる」「粉塵が舞う」が挙げられる。

5.空気浄化緑化技術の開発

大和ハウスグループの保有技術に壁面に植物を育成する土壌基盤型壁面緑化「D’sグリーンフレーム」の開発を行った。壁面緑化と大気浄化を組み合わせた壁面緑化技術として、土壌通気方式を広大な敷地不要で意匠性の高い、都市部に適した大気浄化システムである。 

<質疑応答>

Q:活性炭の種類はどういうものですか?

A:ヤシガラ活性炭が多いです。活性炭を用いたバイオ浄化は水処理よりは遅いが週12回の攪拌で浄化処理を保てています。

Q:リンの溶出で問題はありませんか?

A:土壌浄化においては、悪影響はないと考えています。

Q:東京の豊洲市場の土壌汚染の問題はどうか考えられますか?

A:地下空間での流出放置が問題と考えます。建物があるので掘削除去は困難だと考えられます。

Q:活性炭フィルターの耐用として交換の目安は?

A:耐用として1~2年で交換と考えておりますが、現在検証中になります。

Q:光触媒の分解で交換時期の判断はどのようにお考えですか?

A:空気清浄機のように運転時間で交換サインを表示することも想定しておりますが、現在検討中になります。

Q:スライド51で生物活性の阻害がありますが検証はいかがですか?

A:土壌微生物は立命館大学で培養されているものをビーカーレベルで検証しました。油分分解菌が利用できないような非常に小さな活性炭の細孔に油分が吸着されたため、分解菌の活性が落ちたのではないかと推察しております。

Q:排水処理で微生物による活性化を行いますが、土壌で行う場合に微生物そのものが  活性化されはしないですか?

A:ある条件では活性化されますが、弊社では活性化技術としては確立できておりません。

Q:海外からの引き合いはありますか?

A:海外へは会社単独では対応することができず、バイオメディエーションは政府等の介在が必要と考えます。

                  (文責 上田泰史 川越講師監修)