省エネ施策導入における課題

著者: 深田 晃二  /  講演者: 楠部 勢太郞 /  講演日: 2017年11月20日 /  カテゴリ: 環境研究会 > 講演会  /  更新日時: 2018年03月14日

 

環境研究会・第81回特別講演会・衛生工学部会第19回例会 合同例会要旨

日 時;20171120日(月) 1830分~2030
場 所;大阪市 アーバネックス備後町ビル3階ホール

講演2:省エネ施策導入における課題

講師: 楠部 勢太郞 (株式会社 きんでん) 技術士 衛生工学部門

はじめに

講師は建築機械設備に関する工事管理、設計・提案業務に従事され、近年は省エネに関する設備診断や提案業務を担当し、今春、衛生工学部門で技術士資格を取得されたばかりだが秋から東京転勤となった。電気工事が主体の会社にあって、この分野での事業拡張に対する期待度がうかがえる。

省エネバリア

資源エネルギー庁の指摘によると、省エネ技術や機器の導入普及を妨げる要因が「省エネバリア」の存在であるという。これらの解消にはESCOBEMS等のエネルギーマネジメント支援ビジネスの活用が有効であると言われている。講演では、省エネバリアのうち、特に資金調達力・リスク・情報不足・限定合理性のバリアについて解説があったあと、具体的な事例紹介がなされた。

既存空調設備のリニューアルの省エネバリアとして、次などがある。
①対象となる設備の実情の負荷計測と分析(限定合理性)
②空調負荷特性に適したシステムの抽出(情報不足)
③大規模投資が必要なケースが多く負荷状況によっては省エネ削減効果が小さくて投資回収年数が大きい(資金調達力、リスク)

事例紹介

まず、商業施設に外気CO2制御を導入し投資回収年数を少なくした具体的な事例紹介があった。効果が出た理由として、平日と休日で在室人員が大きく変動することを事前の濃度測定と分析で把握することにより、外気負荷低減と搬送動力低減の同時効果が出たことが上げられた。

次に、商業施設(既存は500RT×2基のガス焚吸収式冷凍機)の年間冷房負荷率を把握し、デュレーションカーブ(期間の負荷について、その発生した時間とは無関係に大きい順にならび替えた曲線)を用いることにより、次を把握した。
  ①負荷率50%以上の時間は1割未満
  ②負荷率10%未満の時間が5割以上
  ③負荷率0%が約4割であること
調査結果に鑑み容量の半分の500RTを電気式高効率モジュールチラーとし高効率運転範囲を拡大した。もう1台は継続利用し、ピーク時対応とすることにより省エネバリアとなる資金調達力に対する効果が出たことが上げられた。

今後の検討事項として、専門知識の社会への展開と、投資対効果向上に着眼した技術に関する情報収集と検証が必要であり、環境保全と社会貢献に注力すると表明された。

(深田晃二 記、監修 楠部勢太郞)