Pro-MOCS式化学物質管理 -創設段階活動報告(2017年度)-
近畿本部化学部会(2018年3月度)講演会報告
日 時:2018年3月03日(土)15:00~19:00
場 所:近畿本部会議室
講演2:Pro-MOCS式化学物質管理
-創設段階活動報告(2017年度)-
伊藤
雄二 近畿本部協賛団体(有)相模ソリューション 技術士(化学)
講師は化学メーカーにて、研究開発・海外勤務・レスポンシブルケアに関する業務に従事し、現在は毒性学と有害性評価書の作成を専門とする(有)相模ソリューションの代表である。平成29年化学物質管理士に認定され、現在、化学物質管理者育成について精力的に活動しておられる。
1.活動組織の紹介
(公)日本技術士会化学部会における、化学物質管理研究会(近畿本部化学部会も協力)と(一社)化学物質管理士協会の活動とその関係などを下記の図を用いて紹介された。
2.安衛法/行政が事業者に求める≪化学物質管理者≫:化学物質管理士協会からの供給策
2)SDS作成者/受領者の資格要件(JIS規格)とSDS受領者に対する法的義務(労働安全衛生法 101>条 法令等の周知)の説明があった。
3)化学物質管理者等 (社内・外部)の供給源として、次のように考えている。
(試験制度の発足は2019年を予定)
①化学物質管理士補
管理士協会の認定する座学40時間以上
または実務経験2年以上に、受験資格
②化学物質管理士
化学物質管理補で、実務実績をもとに技術士の資格を保有
または同等の資格を有すると、管理士協会が認定したもの
③賛助会員(団体・個人)
個人:実務経験が豊富で、管理士協会が入会を認めたもの
団体:管理士協会の財政安定化(暫定)のために寄与する団体*
* 対価に見合う技術コンサルティングや人材育成サービスを用意
3.Pro-MOCS式化学物質管理の概要
GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)について、未分類を含む多成分系混合物・化学製品向けの暫定分類の提案が示された。その背景として、化学物質のリスクアセスメントが化学物質を取り扱う全事業者に義務化されたのを受けて、業界全体が抱える各業界に特有な課題に着目し、勉強会・事例検討会にて課題解決策を模索してきた結果の一つである。今後、さらに研究成果の事業化に乗り出し、化学物質のリスク評価における「暫定分類法」の定着をめざす。
暫定分類の留意点と、第13次労災防止5か年計画(2018年4月~2023年3月)との整合についても検討を行い、その成果として暫定分類を選択することで、SDS(安全データーシート)の作成が容易となり、そのためにもSDSの品質を保証するための資格制度は必要である。
4.これまでの実績と計画
勉強会の総括、研修会の総括、事例検討会(近畿:奇数月の土曜日開催)などの経緯と、新年度の計画案について説明(省略)。
5.≪化学物質管理士≫資格制度の設計
化学産業は世界・国内でみても自動車産業に次ぐ位置にまで成長してきた。化学に対する利便性は理解しても、一方で事故の恐怖や毒性への不安をぬぐえない。化学物質のリスク最小化を実現するために、化学物質とその混合物には様々な法規制類の整備が進められたと同時に、事業者には自主的な管理活動が求められ、製造事業者にとどまらず、工業会や様々な供給連鎖間で自主管理活動に取り組んでいる。しかしながら、化学製品全般では化学の知見が行き届かないところも多くみられるのも現実である。
そのため、化学物質のリスク最小化を達成・維持・展開させるため、化学の性状をよく理解した上で化学物質管理の手法を的確に用いて社会に貢献できる専門人材「化学物質管理士」として、一定の資格要件を満たすものに「化学物質管理士補」の資格を与える制度を創設する。そのために、検討・考案された設計思想について、制度の概要、資格の有用性、資格の特徴、資格要件を固め、普及・定着策に関して産学官への要請を続けていきたい。なお、今後の活動スケジュールとして、行動計画2030、行動計画2040を設定している。
6.質疑・応答
Q1:管理士の法的バックグラウンド(位置づけ)は?
A1:民間資格を考えている。現在の化学品に関する法規制は官庁ごとの縦割りになっており、関連する資格も管轄する官庁が異なっており、広範囲な法規制類をカバーする化学物質管理士のような資格を国家資格にお願いしても対応できる役所はなかった。関係各機関や所属技術士に働きかけはしており、専門性のある報告を有資格者に求める制度(建設部門などですでに広く定着しているが化学部門関係ではまだない)を、機会あるたびに政官に訴えていく。そのためにも、技術士が担う形で、今後の活動で信用を得て進めたい。
Q2:GHS未分類を含む多成分系混合物化学製品向けの分類方法、内容はGHSに準じていくのか?
A2:GHS分類は化学品を分類するには優れた国際標準の制度ではあるが、化学製品全般に適用させるにはまだまだ適切な知見やデータが足りていない。暫定分類法はその不足を補完する制度である。いったん手持ちの知見とデータを有効利用して暫定分類にあてはめてもらい、その後事業者が適切なデータを適切な時期に計画的に取得してもらって、段階的にGHS分類が完了していくように計画する趣旨である。その計画を効果的、効率的に実施するには、資格者制度による人材育成が前提となる。
Q3:物質A及び物質BのSDSはそれぞれあるが、AとBの混合物のSDSは信頼できない場合、どうすればよいか?
A3:7月からの研修会で演習をするので、ぜひ出席して事例紹介や意見の交換をして欲しい。
Q4:(意見)エアバッグ用薬品について仕事をしたことがあるが、化学業界外の人たちは化学物質について知識がない場合が多く、管理士が活躍できるような場を作っていってほしい。その意味で他業界、官庁などに管理士の話を広げていく必要があると思う。
A4:今後ともに、ご協力いただき意見の交換をお願いしたい。
作成:上田修史、 監修:伊藤雄二