地球温暖化の進行状況、CSR・ESG・SDGsに対する日本企業の対応及び問題点
環境研究会・機械システム部会 合同講演会要旨
日 時;2019年3月9日(土) 13時30分~17時00分
場 所;大阪市 アーバネックス備後町ビル3階ホール
講演1:地球温暖化の進行状況、CSR・ESG・SDGsに対する日本企業の対応及び問題点
講師:外山榛一 技術士(機械部門)
1.地球の温暖化影響
(1)このまま、地球温暖化が進むと、1986~2005年の平均に比べて、最悪の場合2100年には、気温が4.8度上昇し、海面が82cm上昇すると予測されている。
(2)1850年から2000年にいたる期間に、世界の平均 気温0.8℃上昇、世界平均海面水位は約150mm上昇し、一方で、北半球の積雪面積は200万km²縮小の傾向にある。
(3)北極海海氷面積の縮小:左図、オレンジ色の領域は2000年の海氷線を示し、白い海氷線は2018年9月10日の海氷面を示す。概略の比較である が、海氷線が面積比で約20~30%減少している。
(4)永久凍土の溶解に伴うリスク予想
①半球の陸地の約25%を占める領域に存在する
②永久凍土には合計数十億トンの温暖化ガスが内包されている。
③ガスの主成分はメタンガスとCO₂で、メタンガスはCO₂の25倍の温暖化の影響力を有する。
④地球温暖化が進んで、永久凍土の溶解がさらに進むと、地球温暖化がコントロールできない非劇的な状況に陥る危険がある。
⑤パリ協定で表明された「地球温暖化上昇を2℃より下方に保持し、又は1.5℃に抑える必要がある。」を厳守する必要性が高い。
(5)熱帯地方、ツバル諸島の海面の上昇の結果、海岸線の浸食が進んでいる。
2.日本のジエンダーギャップ指数の問題点
日本はジェンダーギャップ指数が世界の114位にあり、 女性が、社会的に活躍の場を与えられていない。
(1) 日本における女性管理職割合を国際比較すると韓国を除いて、欧州先進国の約半分以下である。女性の年間収入も45歳~65歳男性の50%以下の状態にある。男女間の不公正な年収格差を早急に解消しなければ、日本の現状の社会の閉塞感が解消しないのでないかと、筆者は懸念する。
(2)個人的見解ではあるが、女性の生き方を注意深く観察すると、多くの若い女性が、男性側の悪意ある中傷や社会的包囲網の影響を受けて、小学生・中学生段階から、自分の将来の夢を追い求めることが難しいと感じていたのではないか。
3.COP21 パリ協定
2020年からの温暖化防止に関する国際条約は2015年12月、パで開催された国連気候変動枠組み条約第21回締結国会議(COP21)で採択され、2016年11月に発効した。パリ協定は、 先進国に限らず途上国に対しも、自国の能力に応じて自国で定めた削減目標に取り組むことを求めている。
4.CSR Reportや統合Report開示企業の 社会的評価
Topics株価はCSR Reportや統合Report発行の企業の株価は、その他企業と比較して明らかに順調な株価上昇傾向を示している。
5.ESG(環境、社会、Governance)投資・ESG経営とは何か
環境・社会・ガバナンスの3つの要素に十分な配慮を行って、投資を行うのが「ESG投資」、経営を行うのがESG経営。日本企業の評価は多くの項目に関して世界平均を下回っている。
6.日本のSDGs 達成状況の評価 :日本が海外からどのような評価を受けているか
①全149か国中で、18位と総合では上位にランクされる。
②17項目中、達成できているのは、「目標4:質の高い教育をみんなに」、「目標6:安全な水とトイレをみんなに」、 「目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう」の3項目のみ。
③一方で、「目標1:貧困をなくそう」、「目標5:ジェンダー
平等を実現しよう」、「目標7:エネルギーをみんなに、そ してクリーンに」、「目標13:気候変動に具体的な対策 を」、「目標14:海の豊かさを守ろう」、「目標15:陸の豊かさを守ろう」、「目標17:パートナーシップで目標を達成 しよう」などは達成にほど遠い状況であると評価されて
いる。
7.石炭火力発電所市場の展望
日本の削減予測によればパリ協定の求める削減ライン以内にCO2削減を実現することは困難と見積もられる。
少なくとも2027年まで追加分が廃炉分を上回る必要がある。このペースで増加すると、2050年にCO₂排出量を0にできるのか疑問が多い。英国では2023年から石炭火力発電の運転を制限し、2025年から閉鎖する方針が示されている。
石炭火力発電所への投融資額 日本の民間銀行の投融資額は突出して多いと、世界中から指摘され、石炭火力発電所の段階的廃止が急務であると世界中から警告されている。既に日本生命保険相互㈱は石炭火力発電事業への融資を全面的に停止すると発表している。
8. むすび
(1)2027年まで石炭火力発電所増設を継続すると、2050年 までに、急激にCO₂排出量を0にできるのか。計画案そのものが国際的な投資機関にそっぽを向かれる可能性が高い。
(2)男女雇用平等法等の支援があっても、SDGsの開発目標 5「ジェンダーギャップ平等を実現しよう」の合意された達成期限2030年までにジュエンダーギャップ指数を世界50位以内程度に改善可能か疑問が多い。
(3)現実的な判断として、国内大半の企業が早急に統合報告書を発表していくことが求められていると考える。
Q&A
Q:COP21で気温上昇の限界を2℃以下とした理由は?
A:2℃を超えると気候が暴走して制御不可能となる可能性があるから。
文責 末利銕意 監修 外山榛一