近海の最近の環境と水産資源の状況

著者: 濱崎彰弘、佐々木一恵  /  講演者: 反田 實 /  講演日: 2020年1月17日 /  カテゴリ: 環境研究会 > 講演会  /  更新日時: 2020年03月26日

 

環境研究会 第93回特別講演会(20201月度)報告

  2020117日(金) 18:3020:30
  アーバネックス備後町ビル3階ホール

講演1 近海の最近の環境と水産資源の状況

講演者 :反田 實
兵庫県立農林水産技術総合センター水産技術センター 技術参与

反田(たんだ)先生は、瀬戸内海の環境と水産資源について長年研究をしてこられました。魚が獲れなくなった原因は、水がきれいになりすぎて貧栄養状態であるためという新聞記事に反田先生の名前が時々見られます。右の図のように漁獲量とTN(総窒素)には相関関係があり、1995年から窒素規制が行われTNが年々減少していき水がきれいになっていきましたが、漁獲量もTNの減少につれて減少していきました。

   

瀬戸内海環境保全特別措置法により環境の保全が図られています。法律は5年毎に見直しが行われます。令和2年の次回改正では貧栄養化問題への取組が織り込まれる見込みです。兵庫県は、国に先駆けて平成元年に「環境の保全と創造に関する条例」を一部改正し、「第6章 豊かで美しい瀬戸内海の再生」を新設し、栄養塩である全窒素と全リンの水質目標値(下限値)を定めました。栄養塩の供給は、ダムの放流、ため池のかいぼり、浄化センターから行います。

兵庫県のノリ生産量は全国一位ですが、生産量の低下に加え栄養塩の不足で色落ち問題が発生しております。栄養塩の供給はノリが必要とする11月から4月の間に浄化センターから供給される窒素、リン濃度を上げたり施肥を行ったりします。

    

イカナゴの漁獲量の急減は、貧栄養化をきっかけに、イカナゴの餌となる動物プランクトンの減少・不足、イカナゴの栄養が不足し、産卵数が減少するシナリオが考えられています。漁業者は、餌をたくさん食べて腹が赤くなった赤腹のシンコがほとんど見られず、腹が青色の青スジがほとんどであると言います。水産センターで調査した結果、近年餌をたくさん食べている個体がほとんどおらず、よう卵数が減っていることが確認されています。

   

 

 (文責:濱崎 彰弘/佐々木 一恵  監修:反田 實))