水の環境遷移領域~出会いの場

著者: 寺川博也  藤井 武  /  講演者: 新保 義剛 /  講演日: 2021年6月4日 /  カテゴリ: 環境研究会 > 講演会  /  更新日時: 2021年10月11日

 

環境研究会・総会後の会員講演

日 時:令和364日(金) 19:0020:30
場 所:Zoomによるオンライン講演会

 

講演1  水の環境遷移領域~出会いの場 

講師:新保義剛 技術士(農業部門・総監)

講師は現在、日化エンジニアリング株式会社に勤務元農林水産省職員で、北海道などの地方、本省、総理官邸、海外の業務を経験した。農業農村工学が専門で、パイプライン、ダムの仕事なども経験してきた。

本日の講演ではサブテーマとして「果たして環境配慮は余計なことか?」を考えてみたいとのことであった。まず、環境はそれを“知り、体験する”ことが大切である。一例として琵琶湖の例では、何を守ればよいか?を考える必要がある。琵琶湖システムといわれるものがあるが、まず琵琶湖と河川・農地がどうつながっているかを、知っていなければならない。自然を守るためには人が不可欠である。

環境は技術論だけでは済まない。評価をするのも人、判断するのも人、人が環境を作り上げる。講師はエジプト、ネパール、ジンバブエなど海外経験があるが、そこで考える日本と外国の違いは、日本は人が住んでいるからこその環境を感じることができる。しかし、アフリカなどではそのようにはなっていない。川は洪水による環境のリセットにより、ダイナミックに変化する。川岸には水環境としての流水域と陸上環境との境界に水たまりである遷移領域がある。

遷移領域は、生物にとっての逃げ場となっている。川には、餌場としての瀬や休憩場としての淵などがある。人間は生育限界を超えるアユを放流してしまうなどの行動をとってしまうことがある。一部の水生生物は移動することが必要なため、生育空間を守るためその移動経路を人間は分断してはならない。滋賀県の野洲川の例では、ミチゲーションとして、生息空間を確保する魚道を作り、生息する生物を守るための基準をつくりパンフレットで関係者に意識してもらった。工事自体をやめることもミチゲーションの選択肢の一つとなりうる。

     ダイアグラム

自動的に生成された説明 

黄砂も環境問題の一つとみることができる。前線を伴わない低気圧である寒冷渦の強風で砂塵が舞い上がると考えられる。その砂塵が偏西風に乗る。ハナカマキリは擬態によって花と見分けがつかない。しかしそれを知っていると普通の人にはわからないことが分かる。環境を考えるときも同様で、知ることで普通の人に見えないものも見えてくる。

講演後の質疑としては、琵琶湖における農地からの窒素やリンの規制の問題、黄砂とPM2.5の中国の環境政策に係るものなどがあった。

        スーツを着た男性の白黒写真

自動的に生成された説明  新保義剛講師

(文責:寺川 博也/藤井 武  監修:新保 義剛)