環境を考えた万博での話題

著者: 鈴木秀男、佐々木一恵  /  講演者: 綾木 光弘 /  講演日: 2023年6月10日 /  カテゴリ: 環境研究会 > 講演会  /  更新日時: 2023年08月14日

  

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講演2 環境を考えた万博での話題

日 時: 2023610日(土)1040分~12
場 所: アーバネックス備後町ビル(Zoom併用形式)
講 師 綾木光弘氏 技術士(森林部門、総合技術監理部門)

 

1.国際的イベントにおける開催意義と開催国の狙い

その主催者、開催国が、何をみせようとしているか?何をアピールしようとしているか?

競技の見学、珍しいものの見学だけではなく、その施設等、別の角度から見ると、主催者や開催国の実情、主張内容と未来が見えてくる。オリンピックも万博も前回の日本での開催と比較すると、大きく内容が変貌している。

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2.2020東京オリンピックでの環境配慮(関連施設での木材使用を例にとって)

平成15年頃には、木材の自給率は19%まで低下したが、その後反転し、現在33%まで回復してきた。日本の森林蓄積は毎年増えてきている。戦後植林された針葉樹林が、伐採の適齢期を迎え、国産材利用の機運が高まってきている。また、材料の力学的強度アップを目指した集成材(LVL,CLT等)の技術開発により、木造建造物の耐久性も大きくアップし、木造高層住宅も建設可能になってきた。それと共に、快適性や親和性等の要素を考慮した人間工学的意味あいからも、木造建築物の良さが再評価され公共建造物にも利用が進んできている。

森林認証制度の進展が大きく寄与して国産材の利用機運が盛り上がってきており、国際的スポーツイベント会場として建造されてきている。その代表例が新国立競技場であり、その使用木材に、認証木材が採用されていることは、このことを如実に物語っている。

木材利用は、東京アクアティクスセンターの内装の木質化、海の森・水上競技場の内装の木質化、有明アリーナの屋根の構造材にハイブリッド材を利用(木材+鉄骨)内装の木質化、カヌー・スラロームセンター管理棟の内装の木質化、大井ふ頭中央海浜公園ホッケー競技場のスタンド棟の内装の木質化と伐採樹木の有効利用、夢の島公園のアーチェリー場での伐採樹木の有効利用、有明テニスの森公園のテニス施設インドアコートの屋根構造材に利用、などプロジェクト認証を取得し、多岐に亘った。

メインスタジアム外周の軒庇(のきびさし)の木材は47都道府県から調達し、一番北側部分に北海道、南端には沖縄と、方位に応じて地域順に並べたという。細部にこだわりながら、日本の伝統的な木造建築の要素を現代的にアレンジしている。

3.2025大阪万博の概要と環境配慮

テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」で、サブテーマが3つ「いのちを救う」「いのちに力を与える」「いのちをつなぐ」あり、SDGsとどのようにかかわっているかが分かる。

「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマの下で行われる一連の活動は、「誰一人取り残さない」という誓いに裏打ちされた持続可能な方法で、多様性と包摂性のある社会を実現することを究極の目的とする、国際連合(国連)のSDGsと合致するものである。  

Team EXPO2025」プログラムは、時間的・空間的に幅広い範囲で大阪・関西万博のテーマを発信していく事業であり、本万博に於いて重要な役割を持つ。また大阪・関西万博は、その運営においてもSDGs達成を実現するため、環境や社会への影響を適切に管理し、持続可能な万博の運営を目指している。国際イベントにおいて、SDGsや、環境配慮をしたコンセプトや、施設設計が必須項目となってきている。

  

オリンピックでの競技での国家間競争や、万博での最新技術や珍しいものの展示は、昔の感覚となりつつあり、開催コンセプトや開催施設に、環境に配慮した要素を入れ込まないといけない時代に突入している。開催終了後のレガシーとしても、その要素が問われている。

4.本日の話しのまとめとして

①2020東京オリンピック

折角の環境配慮の施設等が、ほとんど国民に伝わらなかった(大会後の不祥事が大きく伝わった)。環境配慮の施設、競技を通じての平和の祭典等の伝え方の不足である。

②2025大阪万博

万博協会300名体制で、共創チャレンジ、共創パートナー活動を推進している。技術士会近畿本部では、これに呼応して3年前から15名体制で取り組んでいる。Team Expo2025に加入、2回の展示会に出展。夢洲新産業・都市創造機構(600以上の団体が所属)に特別会員として加盟。大阪パビリオンへの参画も模索中。

これにより「何を訴えるか」、これからの対応となる。大阪近辺では盛り上がってきているが、日本全体としてはまだまだである。

環境問題

江戸時代の江戸はSDGsの最先端であり、糞尿に価値を付けて有効利用していた。自分たちの社会にもこういう環境配慮の実績もあったはずであり、日本発の環境関連の発信も大事である。

(文責 佐々木一恵 鈴木秀男   監修 綾木光弘)