持続可能な社会に向けて―企業とNGOの協働の可能性―

著者: 高橋 健夫 講演者: 杦本 育生 (すぎもと)  /  講演日: 2006年06月19日 /  カテゴリ: 講演会  /  更新日時: 2012年08月17日

 

★環境研究会【第30回特別講演会報告】   060119

日 時平成1819日(

 

テーマ:持続可能な社会に向けて ―企業とNGOの協働の可能性―

講 師:杦本(すぎもと)育生氏   NPO法人「環境法人」代表理事

●プロフィール:1953年大阪市生まれ。1977年京都大学農学部農芸化学科卒業後、1986年まで京都市役所に勤務。その後、ごみ問題市民会議事務局長等を経て、2002年から現職。

 

1.はじめに-温暖化から見た持続可能性

環境、経済、社会的公正の全てが成り立ってこそ持続可能な開発が可能となるが、日本では夢物語と言われている。モルディブの珊瑚礁の白化やツバルの海面上昇等の温暖化現象を紹介。持続不可能な豊かさ。なぜ、私たちは豊かなのか?科学技術の発展だけでなく、資源とエネルギーを、未来世代から、南から、過去から、奪うことができたから。非常に危うい基盤に立っている。

2.CSR(企業の社会的責任)の課題-社会システムを変える

CSRは盛んになったけれど、まだ広報活動の一環、企業ブランドイメージの向上という位置付けに止まっている企業もかなりある。NPO、NGOとの連携、協働にはまだ及び腰の企業が多い。その先にある社会改善につながっているのか。いくら個々にCSRを頑張っても、正直者が馬鹿をみたり、努力し個々の成果をあげた企業やNPOが社会的に評価されない等の危険性がある。個々の企業の活動では、CSRの本来の目的を達成できないことが多く存在する。
CSRの本質を追究すると、個々の企業の活動に止まるものではなく、社会システムを変えていくことに行きつく。そのためには個々の企業では難しく危険性もあり、NPOとの連携した活動が必要。

3.NPOとの関係-敬遠から関心へ、援助・支援から協働へ

① 協働の社会活動で社会システムを変える(対立から協働へ1)

問題を社会的課題へ。例えば、缶、ペットボトルは増え続けている。使い捨て容器はやめろ(消費者団体、環境団体)。分別リサイクルに多くの税金がかかっている。企業にもっと負担を(自治体)。消費者が望むから生産販売している。リサイクル率も大きく上昇している(事業者)。共通の課題として、リターナブル容器を用いることが経済的にも優先される社会システムを創る。

② 本業に関わるパートナーシップ活動を協働で社会システムを変える(対立から協働へ2)

公共交通の積極的利用を呼びかけるためのキャンペーン電車「エコモーション」を叡山電鉄㈱に企画提案、1995年から運用。グリーンフリーズキャンペーンにより、2001年に松下電器産業㈱がノンフロン冷蔵庫を発売。環境マイスター制度(山形県、和歌山県)等。

③(地域)社会を持続可能にしていく活動を協働で社会システムを変える

COP3にあわせて、ジャスコ㈱と地球温暖化防止市民キャンペーンを展開。

4.その他

CSR・企業の評価、グリーン購入ネットワーク、環境市民の提案等。

質疑応答、意見交換

Q:太陽光発電についてNEDOが来年度から補助金を無くしたことをどう考えるか?

⇒現在は日本が約63万kWで世界第一であるが、やがてドイツが日本を抜くであろう。日本の政策転換は理解できない。ドイツは炭素税も太陽光発電に投入している。

Q:地方行政は国からの補助金ばかりあてにしているが、その考えをどう変えていくのか?

⇒日本の環境首都コンテストを2001年から10回にわたり実施中である。75の自治体が参加している。100ページ以上の質問状を通じて自治体への政策提言をしている。

その他、風力発電やLCA等に関する質疑応答があり、盛会裡に終了した。

(高橋 健夫 記)


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