廃液、汚泥などの処理・循環ビジネスの実践的展開

著者: 山崎 洋右、山本 泰三 講演者: 笹山 孝治  /  講演日: 2008年04月14日 /  カテゴリ: 講演会  /  更新日時: 2012年08月17日

 

★第39回環境研究会特別講演会報告

日 時平成20年4月14日月)

 

テーマ 廃液、汚泥などの処理・循環ビジネスの実践的展開

     -動脈産業と静脈産業を結びつけ市場を創造・拡大-

講 師:篠山 孝治氏 株式会社ダイセキ関西事業所工場長

 

講演概要 

ダイセキは、本社が発祥地の名古屋。関西、関東、北陸など全国に6事業所ある。設備投資は年間約50億円。廃液処理は約90万トン/(3千トン/日,2007実績)行っている。年商は約300億円以上、東証1部に上場している。関西事業所は、5年前に発足したが、地域に密着した活動を通じて急成長している。

1.動脈産業と静脈産業の関係

動脈産業はメーカーであり、産業廃棄物を排出する。一方、産業廃棄物処理業者は静脈産業として産業廃棄物の中間処理、再資源化、燃料化などを行う。動脈産業と静脈産業は、人間の身体と同じで、互いに協力して一体としてシステムが成立する。

2.リサイクルの輪

(1)中間処理の役割

中間処理の役割は、産業廃棄物のリサイクル。リサイクルにはマテリアルリサイクル(廃プラ、レアメタル、金属等の資源)とサーマルリサイクル(再生重油、エマルジョン、燃料等)に区分けされる。

(2)産業廃棄物の受け入れまでのルート・手順

産業廃棄物を受け入れるかどうかについて、分析・実験を行い、品質を確認してから契約する。受け入れ後→中間処理→再資源化又は再生燃料化→セメント会社等に資源として供給する。

(3)循環システム

メーカーから出た産業廃棄物を中間処理し、再資源化又は再燃料化し、原料や燃料としてメーカーに戻るのがリサイクルの輪、循環システムである。

3.静脈産業

(1)産業廃棄物処理会社が成長できる要因

 ①低リスク:複数の排出先があるから設備投資をしても常時稼働できる。又景気の波に左右されず、広範囲から排出物を集められる。

 ②高収益性:客が困って入るから廃棄物を出す。これらの廃棄物を組合せ、複合処理が可能。(動脈産業は、金を出さざるを得ない程困っている。)

 ③技術開発の可能性:技術レベルがさほど高くなくても利益が出る。言い換えれば、動脈産業の技術注入により改善し、更に利益率を高めることが出来る。

(2)当社の強みの例

 ①設備投資を積極的に行っており、多数のローリー車を持っている。例えば、急にローリー30車分の処理を要求される等、緊急時にも受注対応できる。

 ②産廃は役所の許認可に時間がかかり、他社が許認可待ちをしている間に、毎年大型投資が出来、競合他社が追随困難な有利な状況になってくる。(先行企業が有利)

 ③大型の生物処理設備で滞留時間を調整する調整技術により量の変化に強い。(同業他社には生物処理設備はない,大手の水処理会社とは違った発想で水処理を行っている)

(3)動脈産業の技術と考え方導入(技術の原点)

   下記の発想で、動脈産業で使われている技術を静脈産業に注入できる。

①常識は絶対ではない。(例:n-MAMと酢酸ビニルの共重合,アクリル酸とn-MAMの共重合等できないと思われていたが、2重結合で解決できた)

②何でもやってみる。(例:混酸・分離←中和という概念で新凝集剤を開発した)

③失敗は成功の道。(例:通常考えられない領域の実験。エマルジョン重合などこれが貴重なデータとなった)

④失敗は大きな財産。(例:同じ失敗は2度とないという顧客の安心感を獲得できる。)

⑤分野が違えば評価が異なる。(例:塗料用樹脂コストが1/10。動脈産業では安い技術でも静脈産業では高付加価値を生み出すこともある)

4.意識改革

(1)№1カンパニーとは、自分の子供を本当に勤めさせたいと思う会社。

(2)地域との密着。(地元優先での採用←雇用機会の提供。地場産業との付き合い)

(3)今後のビジネス(国内):例えば、硝酸関係のビジネスについて、現状は焼却しか処理法がないが、硝酸の規制は年々きつくなって、対応が必要になる。

(4)動脈産業の技術を静脈産業に注入。(主機:動脈産業で対応,付帯機:静脈産業で対応)

5.結論

(1)動脈産業も静脈産業も両方必要

目的は人間の身体と同様に、健康の維持により有意義な人生を送れること

(2)体のバランス

動脈:金で済ます体質がある。今後、静脈を考えた対応が必要になる。
  静脈:現状は利益を上げやすい。しかし、動脈があってこそ成立するのである。

Q&A

Q:水蒸気を使って乾燥させる技術について

A:過加熱の蒸気をノズルに音速以上で通すとダイヤモンドパルスという衝撃波が生じ、蒸気とスラッジが分かれて出てくるので分離が出来る。これが普及しないのは蒸気のコストが高いから。しかし、分野が違えば蒸気代など吹っ飛ぶ。従って、今後も蒸気を使って行きたい。

Q:ダイセキの成り立ちは?

A:最初の会長が事業活動の中で、機械関係、ガソリンスタンド経営を行った後、菜種油の精製を行った。その時、製鉄所から「このような油を処理してほしい」との依頼があり対応した。製鉄所内には多くの油膜入りの水や廃酸があり、その処理を依頼され、水処理を拡大していった。その後、他の業界でも油があることがわかり他業種にも展開した。さらに、名古屋地区だけでなく、北陸に進出。その後、九州、関西と広げていった。今ではセメント業界と密接な関係を作り事業に取り組んでいる。

Q:現場を見せて頂けないか。

A:環境研究会の幹事が申請すると許可が出る可能性があると思う。客だけではなく、新しく廃棄物処理を行うという人が見に来た例もある。(別途調整する。)

Q:分析について

A:まず、産廃分野は客より処理を依頼される。産廃処理出来るものは行政の許可を受けたもののみである。まず客先での分析結果の開示を受ける。当社で行う分析は限られている。

Q:急成長して利益率が良いのは、タンクローリー等で引き取るから?

A:当社にも営業部門はある。しかし、客先から依頼してくることもある。今のところ、企業側からは、安心したところで処理したいというニーズがあり、自然と当社に仕事が流れてくる。 

                                             (山崎洋右、山本泰三 記)


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