グリーンケミストリー グリーンケミストリー(1)

  1. グリーンケミストリー(1)
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著者: 井上 靖彦  /  講演者: カテゴリ: 環境技術  /  更新日時: 2008年11月04日

POINT  
環境にやさしいものづくりの化学をいう。環境対策といえば、従来は生成した有害物質を環境に出さないよう end of pipe 対策が主眼であった。それに対し、有害物質の生成予防に重点を置き、また資源への配慮をして、ものづくりの持続的発展を期するものである。

問題

 環境にやさしいものづくりの化学とは、どういうものですか?従来は環境汚染を引き起こさないように、排出源の管理を厳しくして対処していましたが、それではすまないようです。どう考えたらいいのでしょうか?

解答

 環境にやさしいものづくりの化学の概念が、最近導入されてきました。この概念は、具体的にはアメリカ大統領府の P.Anastas が1998年に提唱したものが有名です。

(1)廃棄物は生成してから処理するのではなく、生成しないようにする。

 従来は、できたものを end of pipe 対策として処理することに努力を傾注していましたが、できないようにすればより環境にやさしくなります。

(2)合成に使った原料をできるだけ製品に取り込むようにする。

 合成に使った原料総量のうち、製品になる割合をアトムエコノミーといいます。アトムエコノミーが大きいほど、副生物が少なく製品への歩留まりが高 いことにな ります。

(3)合成には人や環境に対 して毒性の少ない物質を使用し、また有毒物質が生成しないよう設計する。

 取り扱う化学物質の毒性ができるだけ低いものを使用し、製造時のリスクを下げるようにすることです。

(4)化学製品は、その機能 ・効用 を 損なわず に 毒性を下げるよう設計する。

 製品には目的とする機能を持たせる必要がありますが、毒性が随伴しますので、できるだけ毒性がすくない合成ルートをたどり、製造時および使用時の悪影響がないように配慮すること。

(5)溶媒や分離剤などの反応補助物質は、できるだけ使用しないか、もし使用しても無害なものを使用すること。製品にならない助剤は少ないほうがいいわけです。

(6)エネルギー消費は、環境や経済への影響を考えて、最小となるように配慮し、 また合成条件はできるだけ、常温あるいは大気圧下などの穏やかな条件が好ましいわけです 。

(7)原料物質は、技術的、経済的に実行可能な限り枯渇性ではなく、再生可能なものを使い持続的な発展を実現しましょう。

(8)保護基の脱着、一時的修飾など、製品に取り込まれない補助試薬はできるだけ避けて、アトムエコノミーの低下を防止します。

(9)量論反応よりも選択的な触媒反応がよい。量論反応では、 置換反応や交換反応など、副生物が多くなりやすいものです。触媒を利用して反応性を高め副生物の生成を抑制するようにします。

(10)化学製品は使用後、無害物質に分解し、環境中に残存しないような分子設計をしましょう。

(11)進んだ計測技術により、プロセスのリアルタイムモニタリングを行い、有害物質の生成を抑制するようにしましょう。

(12)化学物質の排出、爆発、火災などの化学事故の発生を最小にするように工夫しましょう。

解説

 アメリカでは 「グリーンケミストリー」、欧州では 「サステイナブルケミストリー」、あるいは日本では「グリーンサステイナブルケミストリー」などとよばれます。内容は環境に配慮した化学を実践しようとの呼びかけです。

井上靖彦
(技術士 ( 化学、総合技術監理 ) 、 EA21 審査人 )


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