環境首都北九州の海外への取組み

著者: 森 和義 講演者:  /  講演日: 2008年09月29日 /  カテゴリ: 北九州エコタウン・山口  /  更新日時: 2011年03月03日

 

北九州・山口研修旅行報告   080929

 

環境首都北九州の海外への取組み

森 和義  技術士(電気電子、経営工学、総合技術監理部門)

 

九州に来ると、九州人のアジアに対する熱い思いに感心させられる。最もアジアに近い場所にいることの責任感として、アジアとの架け橋にならなければならいとの思いであろう。あるいは、実利的にも、交易・交流での優位性を生かしたいとの願いからもあろうか。

私が、このことを最初に感じたのは、2005年福岡で開催された技術士全国大会に出席したときであった。そのときの大会宣言にも“アジアへの展開に対し、広い視野で長期的な進路を見極め、「技の連携」をもって、わが国のアジアワイドの発展に先導的な役割を果たす。”としている。

今回、北九州市から説明を受けた内容には、環境モデル都市として、海外への取組みが、中核に位置づけられている。「都市構造」「産業構造」「人財育成」「文化の創造」「アジアへの貢献」という総合的なアプローチのもと「アジアの低炭素化に向けての都市間環境外交のあり方」を提示するとしている。本来なら、国レベルの課題とすべき内容を、一都市が担ってやろうという心意気が感じられる。

5年間に具体化する予定の取組みには、次などが含まれる。
①わが国の技術移転の窓口としてのアジア低炭素化センターの設立
②環境協力都市ネットワークを活用したコ・ベネフィット低炭素化協力
  :これまで構築したネットワークを利用して、技術移転・環境教育・CO2削減協力
③アジア低炭素化人材育成プログラムとして、5年間で2,000名の研修生の受け入れ
④中国での「エコタウン」の建設協力

北九州市のエコタウンは、他のメンバーから報告されるように、多くの側面を有しているが、海外への協力は「低炭素化」が中核となっているようである。しかし、この間に、東アジア、とりわけ中国との環境に関わる関係も変化してきている。日本の東側に位置する中国からの大気・海洋の汚染の影響は大きい。石炭を主力とするエネルギー消費大国、中国である。環境対策も不十分であると報道されている。東シナ海の海洋汚染も深刻である。まず、九州が影響を受けるという意味でも、当事者的な意識も必要かもしれないが、自己防衛的な発想でなく、相手国事情に配慮した協力が必要であろう。

その他、日本国内の廃棄物のリサイクルに影響を及ぼす資源ごみの中国への流出などの問題もある。地球温暖化が、中国・モンゴルからの黄砂を増加させているとの報告もある。地球温暖化は、「低炭素化」のみで解決できるのかの議論もあるが、日本の進んだ環境技術全般のアジア各国への移転努力は重要である。

北九州市の環境モデル都市構想は、はっきり言って、一都市で取組む範囲を超えているように思う。是非、国レベルの海外協力の全体構想に組み込まれていくことが必要であろう。

最後に、本年1018日、島根で開催された技術士全国大会で、栗原茂技術士から、本人の中国を中心とする技術協力の経験から、東シナ海を含む「環日本海」を取り巻く、日本、中国、韓国、北朝鮮、ロシアなどの国が、「環日本海環境保護条約」を締結し、協同で環境対策にとりくむべきとの提案があった。これは、バルト海沿岸7カ国(デンマーク、西ドイツ、東ドイツ、スエーデン、フィンランド、ポーランド、ソ連)が1974年「バルト海洋環境保護条約」を締結して、バルト海の海洋汚染の解決に成功した例に学ぶとのことであった。


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