磁気利用による廃水処理技術とビジネスモデル

著者: 山崎 洋右 講演者: 西嶋 茂宏  /  講演日: 2006年09月28日 /  カテゴリ: 講演会  /  更新日時: 2012年08月17日

 

★環境研究会9月度特別講演会報告 060928

日 時平成1828日

 

テーマ:磁気利用による廃水処理技術とビジネスモデル

講 師:西嶋茂宏 大阪大学大学院工学研究科 教授 環境エネルギー工学専攻

キーワード : 磁気利用、廃水処理、超電導磁石、研究開発、産業化

 

1.超伝導磁石を用いた高勾配磁気分離システムの紹介

(1)開発のいきさつ

再生紙処理工場は大量の水(数千トン/日)を使用し、ほぼ同量の廃水を排出する。最近、廃水処理基準強化により、その基準を満足するためには、古紙再生事業の存続そのものが危ぶまれる程の費用がかさむという経済的問題を抱えている。そこで、再生紙処理工場にも導入可能な磁気分離システムを開発した。(処理能力:2000トン/日,設置費用:1億円)
従来の活性汚泥法なら数億~10億円の投資が必要。(大幅な設備投資コストダウン)

(2)システムの概要

①廃水(紙含有濃度約数百ppm)投入 → ②磁気凝集剤(マグネタイト)添加(COD成分をフロック化させる) → ③沈殿槽でフロックを沈殿 → ④フィルター(素材:SUS430、太さ:1mm,篩目:1cm)に超電磁石からの強磁場をかけ、凝集したフロックをフィルターに付着させる →⑤処理後の廃水(紙含有濃度約40ppm)

(3)結果

紙含有濃度40ppmでは廃水として流すことは出来ないが、再生紙処理工場で使用する水として再利用することが出来る。そのため使用水の大幅低減(コストダウン)効果が得られた。

①ランニングコストは、人件費込みで約130円/トンで下水道の約半分
②このシステムは熟練者を必要としない。(人の制約を受けない)

(4)本システムのマーケティング

①紙再生処理:関西:約10%,関東:約30%で、関東を狙いたい。
②他業界の市場:食品(50億円),化学(20億円),機械(60億円),電力(40億円)

2.磁気分離の基礎

単位体積あたりの磁気モーメントと磁気勾配の関係や強磁性体、常磁性体、半磁性体の性質等について説明。特に強磁性体はさほど強い磁界を与えなくても十分適用出来る。(前述の磁気分離装置による紙捕獲装置もこの原理を用いている)

3.磁気分離利用による他の応用

(1)薬剤配送システム(人体)

 ①背景

癌等局所的な患部のみへの薬剤投与が非常に困難。制癌剤を全身に与えると非常に多くの制癌剤を与えることになり、制癌剤投与による副作用のリスクが問題となる。
そこで、磁気により、薬剤を外部から患部に磁気を使って持っていく研究を行っている。

②研究内容

A.血管の要所(血管の近くの体外)に磁石をおいて、強磁性体の入った薬剤を患部に持っていく

B.薬剤の大きさは、200nmにする必要がある。

C.ラットでの実験

要所に磁石を置くことにより磁気の入った薬剤を患部に運搬することに成功、(血管から20㎜離れた要所(体外)に磁石を置く実験、及び50㎜離れた要所(体外)に磁石を置く実験

4.研究から産業化に至る道程

(1)日本は、先進技術はあるがそれを事業化出来ていない。
(2)高い技術力を国際的な競争力に転換出来ないことが日本の産業が長期間低迷している原因。
(3)研究から産業化までの難所

 

 

 

 

 


(4)魔の川の克服

①誰に対してどんな価値を提供するか。
②保有する経営資源をどの様に組み合わせるか。
③顧客とのコミュニケーションをどの様にしてとるか。
④いかなる流通経路で、どの程度の価格体系で顧客に届けるか。

(5)死の谷の克服(製品化に成功したが事業化に不成功であった反省点)

①製品の開発                                                          ④収益構造
②ビジネスパートナーや顧客とのコミュニケーション      ⑤流通経路
③ターゲットの絞り込み                                             ⑥競争優位性

5.事業化から産業化へ

(1)コンソーシアムの立ち上げ(ダーウインの海の克服、公的資金からの脱却)

①コンソーシアムのメンバー:磁気・プラント・水処理等のメーカー、大学
②コンソーシアムの活動:パイロットプラント(複数製作)→製品化→販売
③その他コンソーシアムの活動:会誌の発行、リクルート、磁気分離研究の支援

(2)ビジネスモデル検討会

①成功ビジネスモデル検討,失敗ビジネスモデル検討
②技術を蓄積する技術ビジネスモデルの情報発信データベース化
③先端技術の受け皿となるビジネスモデルのデザインを行う

(3)将来

中国、韓国、日本と連携し、アジアに適用される先端技術ビジネスモデル検討会を確立し、アジア圏の先端技術に資する。

6.Q&A

Q:沈殿槽で沈殿する率は?
A:沈殿槽流入時約数百ppmが沈殿槽排出時約150ppmに低減

Q:凝集剤は?
A:マグネタイト(黒錆)。処理後回収し、再利用している。

Q:このシステムで回収した紙は?
A:産業廃棄物として処分している。

Q:フィルターに付着した紙はどうやって除去しているか。
A:フィルターをシステムから取り出した後、約60%の水分を含んだフィルターに付着した紙を電気掃除機で吸引、除去している。

Q:銀行や資本家から金を借りて事業化する考えは?

A:その考えはない。研究室で出来た成果を世の中で使って行くことを主目的としている。(金にはあまりこだわっていない。)

              (山崎 洋右 記)


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