研修旅行報告<豊島産廃不法投棄対策>

著者: 高橋 健夫 講演者:  /  講演日: 2004年05月21日 /  カテゴリ: 豊島産廃  /  更新日時: 2011年02月15日

  

環境研究会【研修旅行報告】    040521

日 時:2004年5月21日(金)~22日(土)

 

場 所: 豊島(香川県小豆郡土庄町)・直島(香川県香川郡直島町)・小豆島 

 

【はじめに】

我が国最大級の産業廃棄物不法投棄事件(豊島事件)として有名になり、廃棄物行政の見直しを行う引き金となった現場である香川県豊島を見学した。また、豊島の産業廃棄物等を中間処理している香川県直島環境センターや隣接する三菱マテリアル㈱直島製錬所を見学した。

【行程】

21:宇野からフェリーで直島に渡り、昼食の後、三菱マテリアル㈱直島製錬所及び直島環境センターを見学。海上タクシーで小豆島に渡り、小豆島グランドホテル水明にて宿泊・懇親会。

22:小豆島から海上タクシーで豊島に渡り、産業廃棄物の不法投棄現場・処理施設を見学した後、交流センターにて昼食。その後、再び小豆島に渡り、島内観光の後、坂手から超高速艇にて神戸、大阪へ。

【豊島問題】

豊島問題とは、豊島の西側に1975年から10数年間にわたり、悪質な処理業者と香川県がその業者を擁護したことによって有害産業廃棄物(シュレッダーダスト、汚泥、鉱滓等)が不法投棄され、野焼きされた事件である。不法投棄された産業廃棄物は、汚染土壌を含めて約50万m、約56万tにものぼる。

198511月に兵庫県警が処理業者の事業場を強制捜査し、摘発。12月に香川県が産業廃棄物処理業の許可を取り消すとともに、産業廃棄物の撤去を命令。1994年に豊島住民が公害紛争処理法に基づく公害調停を申請。2000年6月の公害調停最終合意により、香川県が産業廃棄物等を2016年度末までに豊島から搬出することが決定し、「共創」の理念に基づいて行動する豊島宣言を採択。昨年4月から直島へ輸送を開始した。

【見学先】

1.産業廃棄物の不法投棄現場・処理施設

廃棄物対策豊島住民会議議長の砂川氏の案内により不法投棄現場と豊島のこころ資料館を、香川県職員の案内により中間保管・梱包施設/特殊前処理物処理施設(2003年3月完成)と高度排水処理施設(同年4月完成)を見学。約69,000㎡の範囲に不法投棄された産業廃棄物等は現場中央部への移動の後、透気・遮水シートが敷設されている(暫定的な環境保全措置)。産業廃棄物等は重機により掘削され、一定の大きさ以上の金属や岩石等の特殊前処理物が選別、除去される。

その後、直島での中間処理を効率的に行うため、溶融助剤(生石灰又は炭酸カルシウム)が添加、混合されて、約2日間養生し、中間保管・梱包施設でコンテナダンプトラックに積み込まれ、フェリー型の専用輸送船により直島へ海上輸送(約300t/日、1日2往復)される。

周辺海域への汚染拡大を防止するため、不法投棄現場の北海岸に設置された遮水壁(長さ約360m、最大深さ18m)によって流出を防いだ有害物質を含む浸出水・地下水は、ポンプで汲み上げられる。その後、アルカリ凝集沈殿-生物-凝集膜ろ過-ダイオキシン類分解-活性炭吸着-キレ-ト吸着による高度排水処理施設(処理能力:65/日)で浄化される。

施設整備費は、豊島50億円、直島145億円、専用桟橋設置に13億円の合計208億円。これに向こう10年間の施設運転管理費・海上輸送費等を合わせると約500億円の事業費となる。

   現場にて砂川議長より説明を受ける

2.香川県直島環境センター (豊島廃棄物等中間処理施設)

会議室にてセンター職員の水野氏より説明を受けた後、中間処理施設の各処理工程を見学。直島環境センターは三菱マテリアル㈱直島製錬所内にあり、2002年3月に直島製錬所とともに「エコアイランドなおしまプラン」として国のエコタウン事業の承認を受け、20039月に完成。豊島に不法投棄された産業廃棄物とその汚染土壌、及び直島町の一般廃棄物を処理対象とする施設である。回転式表面溶融炉(100t/日×2基)とロータリーキルン炉(24t/日×1基)により中間処理し、溶融スラグや鋼鉄合金・アルミを副生成している。溶融処理に伴って発生する飛灰は隣接する三菱マテリアル㈱直島精錬所で有価金属を回収し、スラグはコンクリート用骨材等として利用するなど、副成物の再資源化・有効利用を行っている。

    直島環境センター前にて

3.三菱マテリアル㈱直島製錬所

事務所会議室にて桜井課長より説明を受けた後、バスで精錬所内を見学。直島製錬所は1917年に設立された銅・貴金属の製錬所である。銅精鉱は三菱法と呼ばれる三菱連続精銅炉(S炉-CL炉-C炉)により処理され、精製炉を経て純度99.5%の精銅となる。その後、アノードに鋳造し電解工場で電解精製され、品位99.99%以上の電気銅となる。また、銅電解工程でできるスライム等を原料として処理、精製し、金、銀、白金、バナジウム等を回収している。生産能力は電気銅225,000t/年、金60t/年、銀480t/年。

【感想:安ヵ川常孝代表幹事】

今回の研修旅行は20033月に企画したが、見学先の建設スケジュールその他の事情で2004521日~22日になった。豊島に大量の産業廃棄物が不法投棄された経緯、住民と行政が同意した調停の詳細、廃棄物リサイクル施設の見学、不法投棄された処理場跡地の浄化施設見学、これらを2日間の行程にはめ込み、さらに小豆島での観光を組み込んで関係者との調整をした。       

新聞その他で豊島事件の経過はよく分かっていたつもりであったが、廃棄物対策豊島住民会議の砂川三男議長から豊島の紹介、事件の経過について詳しい説明を受け、事件の背景にある行政の失政が地域に及ぼした影響の大きさを改めて認識させられた。

環境問題がいろんな形で認識され、循環型社会形成も国民一般の合意事項になっている現在、豊島の廃棄物事件は今後の廃棄物行政のターニングポイントであるだけでなく、足尾銅山の公害事件と並んで歴史に残り、語り継がれていくであろう。「自分たちが島をこのようにした。次の世代に豊かな島を引き渡さねばならない。」と砂川議長が熱く語られたのが印象に残った。

前日は台風接近情報で心配したが、2日間とも快晴であり、充実した楽しい研修旅行であった。

【今後の予定】

環境研究会では621日(月)に例会で報告・意見交換会を開催します。また、公害調停の弁護団副団長の大川真郎弁護士をお招きして、豊島問題についての特別講演を予定しています。

(高橋健夫 記)

 

豊島産廃処理 見学会 写真集

直島

   

   

 

豊島   

 

  海上より遠望

  現地VTR映像より

  自然豊かな集落

 

小豆島

    

      エンジェルロード(干潮時に現れる砂州)

        帰路


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