セキスイハイムの設計思想と環境貢献への取組

著者: 藤橋 雅尚 講演者: 水野 政美  /  講演日: 2007年06月15日 /  カテゴリ: 見学会  /  更新日時: 2010年10月24日

 

技術士中央CPD(20076月度)見学研修会報告

  時 : 2007615日(金)
  所 : 関西セキスイ工業株式会社(セキスイハイムの製造会社)

 

講演 セキスイハイムの設計思想と環境貢献への取組

     積水化学工業株式会社 住宅カンパニー住宅事業部 エコハイムグループ
       主任技術員 水野 政美氏

 

 1)住宅カンパニーとしての事業理念

当社の基本理念は「地球環境に優しく、60年以上、安全に快適に住み続ける住まいの提供」であり、そのために次を大切にしている。
  ①住宅の性能 (耐震、断熱、気密など)
  ②住宅の品質 (設計段階から工事に至までの各段階)

その実現手段として、ユニット工法(住宅を四角い箱組のユニットに小分けし、工場でユニット毎に内装と外装をほぼ完成させた後、現地にトラック輸送する。現地ではユニットを組み立てるだけで住宅を一気に完成させる工法)の住宅を提供している。例えて言えば自動車は工場で生産されるが、住宅についても同じ考え方で生産する発想である。

 2)設計仕様に対するセキスイハイムの考え方

近年、耐震強度の偽装が問題になったが、これは検査機関での改ざんの見逃し、建設会社ならびに現場でのそのままの施工など、何回かのチェックをすり抜けている。世間の方の目で見ればなれあい体質に問題が有るように見えると思うが、実は品質チェック機能の甘さに問題があったといえる。すなわち設計品質(設計チェックの仕組みと専門家によるきちんとした確認)と、ものづくりの品質(つくり込みの体制)に問題点があった。本日はセキスイハイムが、これらのポイントにどのような仕組みを作っているかについて話したい。

当社では設計仕様の開発に際し、設計担当者の案作成の段階から、会社として開発GOのサインが出るまでに、プロジェクト内設計審査で15人、他部署(生産会社、販売会社、技術研究所等)設計審査で10人×3種類、本部設計審査会で15人、合計して種々の分野の専門家60人の目でチェックし、これをISO9001で第三者保証している。

できあがった設計仕様は、国土交通省の認定委員会で承認を受け、始めてセキスイハイムとしての設計仕様が確定する。すなわち、「設計品質」を大切にする仕組みを作り、「品質重視のつくり込み」を実践する基本思想である。

 3)建物完成までの品質確保

一般の建物の場合、発注から完工・引渡しまでの間は、建設会社が一括して請負う形式である。具体的には、基礎工事をA社、躯体工事をB社など、種々の下請けに発注する方法で工事を行う。必要となる部品や材料は下請けが発注する方法のため、元請けの建設会社では部材管理を含んだ全体管理を行いにくい体制となっている。

当社の場合は、工事の80%以上を工場で仕上げるため、使用する部材の殆ど全部について、工場で規格と照合できる体制であることに加え、工程管理しながら工事を行っていることに特徴がある。品質検査においても専任の検査係による検査に加え、流れ作業の後工程の担当者が前工程の異常を発見できるなど、一般の現場工法による管理とは根本的な相違点を持っている。現場施工する20%部分には、品質確保のため完成検査と引渡後の管理に力を入れている。例えば他社にはない室内環境に対するVOC(揮発性有機化合物)の全戸測定、使用部材について履歴を確認できる体制の確立などである。

 4)ごみ、CO2など環境問題について

建設工事でのゼロエミッションは非常に難しいが、工事の大半を占める工場でのゼロエミッション(マテリアル95%、サーマル5%)を2001年に達成した。その後もゼロエミッション範囲の拡大に努め、新築現場は2003年、リフォーム現場で2005年に達成した。さらに再築に関しても、解体した住宅を他の場所で再生住宅として再利用する方法を確立した。その他にも気密・断熱性向上、太陽光発電など環境への配慮の高い住宅を提供している。

5)工場見学

鉄骨組立工程

直方体の枠組ユニットならびに天井と床用のフレームを作る工程である。基本の枠組にはボルトを使わず、溶接で対応していることが大きな特徴である。床材も人力では扱えない大きさの部材を使い、部材節減や防音性能の向上を可能としていた。

外壁・内壁・断熱材の取付、内装工程

専門の作業者が流れ作業で施工していくので、品質保証の容易なことが実感できた。また、ユニットの四方にある縦柱の内1本を省略したユニット4つを、一体として組立てる方式で柱のない広い屋内スペースを確保する工法も展示されていた。

検査・出荷工程

担当者による検査を経て出荷にいたる工程である。現地加工で使用する部材品質を確保するため、当該ユニットの現地での仕上げ加工の際に使用する資材を全て、工場でユニットの中に納めて出荷する方式により使用部材の品質を保証する体制となっていた。

見聞館と耐震テスト実演

6)Q&A

Q 門外漢のため、積水ハウスとセキスイハイムの違いを教えて欲しい。

A 積水ハウスは鉄骨軸組工法、セキスイハイムはボックスラーメン構造の、住宅メーカーである。どちらも元々は積水化学だが異なった道を進んでいる。

 

Q 講演で述べられた専門家、専門知識について、専門とはどういうことを指しているのか。

A プロフェッショナルという意味合いであり大学の研究者や、販売者なども含んでいる。

 

Q ボックスラーメン構造の法定耐用年数は27年と思うが、60年耐用との兼ね合いは。

A 壊さずに2代3代と住める家を目標とする考え方である。

 

Q 環境面から見て、木造、鉄骨、ボックスなどの内、どの工法が最も地球に優しいのか。

A 当社としては、建材のリサイクル可能という面から最も環境に優しいと考えている。

 

Q 木材の利用が結構多いが、その再生利用はどうか。

A 積水化学の事業方針として、可能な限り木材は再生加工材(REW)を使っている。

 

Q 使用部材の変更や改善はどのような手法で行っているか。

A 大幅な変更はモデルチェンジを機として行うが、日常改善も併用している。

 

Q 廃棄ロスを減らすのは工場での裁断ロスを減らすということか。

A ジグの改善、メーカーとの折衝等、あらゆる方法でロスを削減している。

 

Q トータルコスト面から考えて、他の工法との差はどうか。

A 当社は構造鉄材の使用増を人権費減で吸収している。工法による差はほとんど無い。

                        文責 藤橋雅尚


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