PCB処理施設(JESCO)の見学と処理技術

著者: 藤橋 雅尚 講演者: 中川 弘一  /  講演日: 2008年10月17日 /  カテゴリ: 見学会  /  更新日時: 2010年11月01日

 

化学部会・環境研究会 共催 (200810月度)見学研修会報告 081017

  時 : 20081017日(木)
  所 : 日本環境安全事業株式会社(JESCO) 大阪事業所

 

講演 日本環境安全事業株式会社(JESCO)の紹介と、PCB処理施設の概要について

     日本環境安全事業株式会社 大阪事業所 安全対策室 コーディネーター 中川弘一氏

 

1)PCBの概要

ビフェニルのポリ塩化物であるPCBは、電気絶縁性・熱安定性・難燃性・高沸点などの特徴から、絶縁油・熱媒体・感圧紙などに広く利用されてきた。一方PCBは環境中に残りやすいことや、生体濃縮の問題も指摘されていた。毒性については昭和43年に発生したカネミ油症事件を契機に注目されて昭和47年に行政指導で製造禁止・回収が行われ、昭和49年には法律によってPCBの製造・輸入・新たな使用が禁止された。

なお、PCBの毒性評価はダイオキシン類として定められている。具体的には、等価毒性係数(TEF)を設定(最大値:1)し、濃度にTFEを乗じた毒性等量(TEQ)で評価する。ポリ塩化ビフェニルの中では、3,3,4,4,5eCBのTEFが0.1と最も高いが、ほとんどの異性体は0.030.0003もしくは0.00003以下のレベルである。

2)PCBの処理法

日本でのPCBの使用量は約54,000トンであり、使用実績は、電気機器用69%、感圧紙用10%、熱媒体用16%、その他5%である。使用と移動を禁止されたPCBは、その無害化処理が必要なため昭和51年に廃棄物処理法で高温燃焼法が処理基準として定められ、昭和62年~平成元年にかけてメーカーで液状PCB5,500トンを燃焼処理した。その後国内で高温燃焼処理施設の計画が行われたが、いずれも地元同意が得られず処理できないまま保管が続いていた。平成10年に、化学分解法が処理基準に追加され、平成13年にPCB特別措置法が制定されたことにより処理が動き出した。

3)JESCOの概要

同社は、日本環境安全事業株式会社法で定められた政府100%出資の株式会社であり、平成16年設立である。全国を5つに分け、それぞれの地区で保管されているPCBを処理し、平成28331日の事業完了(受託は平成173月)を目的としている。

平成1612月処理開始の北九州事業所をスタートとして順次工場を建設し、平成205月の北海道事業所の処理開始により全事業所の稼働が始まった。なお、処理エリアの区分は各地での保管量をベースとしているため、北海道や北九州は非常に広いエリアのPCB廃棄物を処理することになる。

4)化学処理の方式

PCBの主な化学処理方式は次の5種類である。

脱塩素化分解法 :触媒または金属Naを使用して、ビフェニルとHCl(NaCl)等に分解
水熱酸化分解法 :超臨界水を使用し酸化剤によりCO2H2OHCl(NaCl)等に分解
還元熱化学分解法:還元雰囲気でCOCO2H2HCl(NaCl)等に熱分解
光分解法    :UVを利用してビフェニルとHCl(NaCl)等に分解
プラズマ分解法 :プラズマによる高温化でCOCO2H2HCl等に分解

北九州、北海道、豊田事業所では、金属Naを溶媒に分散して行う脱塩素化分解法、東京事業所では水熱酸化分解法、大阪事業所では触媒を使用した脱塩素化分解法を採用している。

 

5)大阪事業所での処理方法

処理の対象物はトランス類、コンデンサー類、PCB油類であり、工程は前処理と液処理に分かれる。前処理工程で対象物からPCBを分離し、液処理工程でPCBを分解する。

トランス類の処理は抜油・予備洗浄を行った後、解体する。部品は真空下で超音波と溶剤(パラフィン系)による洗浄を数回行い、卒業判定(洗浄溶剤中のPCBが基準値以下であること)の後、資源回収する。PCBを含む溶剤は蒸留し液処理工程に移す。

コンデンサー類は、紙を使用しているためPCBが浸透し、洗浄法では卒業が困難である。このため解体せず真空加熱分離法(400℃、6Pa40Hr)で、PCBを蒸発除去する。

前処理工程で得られたPCBはバッチ式で脱塩素化分解処理する。流動パラフィン溶媒中でスラリー状のPd/C触媒下で、250kgのPCBを加えながら260℃常圧(反応6時間)で、水素添加し、ビフェニルとHClに分解する。他の事業所とは異なってアルカリを使用せず、発生するHClは塩酸として回収している。なおH2は水の電気分解法で自社で製造している。

環境対策については、PCB漏洩対策としての防油堤・塗床構造、排気対策としてのPCBオンラインモニタリング監視・活性炭排気処理装置等を設置している。

6)工場見学 (2班に分かれて見学: 表 総務課長、中川 コーディネーター)

工場は、見学者を受け入れる(公開)前提で設計されており見学通路より見学した。見学できない箇所についてはモニタリング用のディスプレイが設置されていた。大阪事業所は準工業地域に立地していることによる制約があることと、連続した敷地を確保できず前処理工場と液処理工場が道を隔てているため、PCBの輸送や管理を工夫しているとのことである。

7)Q&A

Q PCBの毒性についてはカネミ油症以前から指摘されていたはずだが

A 仰せの通りカネミ倉庫はダーク油事件(鶏の大量死事件)で、トラブルが発生していた。他にも鳥類・魚類の生体内からPCBが検出されていた。

 

Q 保管中のPCBはどんな状態か。

A 弊社では、早期登録割引制度を設定して、行政に届けている情報をベースに保管状況の事前登録を行った。大阪事業所については、捕捉率は7080%であった。

 

Q 建設費、維持費、管理費、及び処理料金を教えて欲しい。

A 建物約50億円、設備費・維持費・運転管理費を含めて約470億円である。平成28年までに全額償却し更地にする前提で原価設定している。処理料金は重さ10kgのトランスで42万円である。(利益は出せないシステム)

 

Q 処理終了後、人はどうするのか。また何人くらい働いているのか。

A 全て時限契約である。自社30人、委託会社(交替勤務制を含む)が、120人程度である。

 

Q 装置に入らない大型トランスや、低濃度PCBはどうなるのか。

A 大型トランスは現地で抜油、解体が前提だが未だ技術的な課題が残っている。低濃度品は環境省が開催する委員会において処理方法等を検討中である。

                                        (図は講演資料から転載)

                        (文責 藤橋雅尚  監修 中川弘一)


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