金属学と鉛の二次製錬

著者: 藤橋 雅尚 講演者: 道本 龍彦  /  講演日: 2006年04月20日 /  カテゴリ: 講演会  /  更新日時: 2010年12月25日

 

化学部会(20064月度)講演会報告-1

  時 : 2006420日(木)
テーマ :講演会

 

講演1 金属学と鉛の二次製錬

株式会社 大阪鉛錫精錬所 道本 龍彦  技術士(金属) 

金属製錬について

金属学は学問的には、無機化学・物理学・資源工学・環境・機械・電気が関連し、その中身は金属製錬学・金属材料学・金属物理学・金属加工学に分かれる。
別の切り口からXYZの3軸に分けて表現してみると、X軸に鉄鋼←→非鉄金属、Y軸に物理的(材料・加工)←→化学的(製錬)、Z軸に学問的←→現場的、を割り付けることができ、全体を8種類に分類できる。講演者は主に金属製錬学の領域で、非鉄金属を化学的な面から扱ってきた。現在は企業に勤務しながら、関西大学大学院の博士後期課程で硫化鉛の酸化による脱イオウの基礎的研究を行っている。投稿論文が資源・素材学会誌に掲載された。

金属の製錬は広義の還元反応であり、遊離金属を生成する化学反応である。製錬の中身は、異相間の分配反応であり、固-液(鉱石の酸抽出)、液-液(メタルとスラグ間)、固-気(硫化鉄鉱の焙焼)、液-気(亜鉛の蒸留製錬)など、種々の相間での分配を扱う。間違いやすい表現に製錬と精錬がある。両者の違いを説明すると、原料から粗金属にすることを製錬、粗金属を純金属にすることを精製と言う。精錬は、製錬と精製の両方を含んだ表現である。

製錬には乾式(水を使わないで高温で行う)と、湿式(水溶液で行う)に加え、電気冶金があり、乾式電解製錬(アルミなどの製錬)と、湿式電解製錬(粗銅などの精製)が行われている。湿式製錬の代表的な工程は、鉱石の予備処理→浸出→固液分離→ろ液濃縮→金属採取である。
さらに、一次製錬と二次製錬の区別があり、一次製錬は鉱石からの金属取り出し、二次製錬はスクラップなどからのリサイクルである。価格の高い金属、有害な金属、用途が限られ比較的回収の容易な金属が、二次製錬の対象になる。 

鉛の用途について

鉛は有害金属であるが世界の使用量は、1900年の100t/yに対して、2004年は670t/y(40%が中国で使用)と伸びている。主な用途は、バッテリー、板・棒材、顔料、銃弾、ケーブル被覆材、合金、ガソリン添加剤である。最大の用途はバッテリーであり2004年では75%のシェアとなっている。なお、バッテリーの内60%が自動車用、残りが産業用(ステーション用や動力用)である。特に中国での需要が年に数10%の伸びを続けており資源の確保が課題である。鉛のその他の用途として、海底ケーブルの被覆材・放射線遮蔽材の需要は安定しているが、合金用・顔料用は衰退している。ガソリン添加剤用について、現在まだ使用されている国もあるが、近い将来消滅するであろう。

鉛の製錬のうち二次製錬のシェアは1960年頃は20%であったが、2004年では56%となり一次製錬より多くなった。これはバッテリーのリサイクル推進が大きい。㈱大阪鉛錫精錬所は二次製錬のみを行っており、原料は主にバッテリースクラップである。溶鉱炉で粗鉛とし、乾式精製後、合金化(カルシウムとの合金)して、バッテリー用として販売している。副産物として、集塵煙灰(主成分は硫化鉛)やカラミ(製鉄ではスラグに相当)ができるが、自社では処理できないので、その方面の技術開発を関西大学で研究している。

Q&A

 Q 公害防止に関して中国の環境問題はどうなっているか。

 A 小さな企業が多く問題が多いので、大企業でないと扱えない方向で規制を進めてはいるが、モグラたたきが現状である。

 

 Q 半田の無鉛化が進んでいるが、どのように考えているか。

 A 現在、無鉛化の方向に進んでいるので、この方面への鉛の需要は減少してゆくと考えている。(完全消滅かどうかは不明である)

文責 藤橋雅尚  監修 道本龍彦  


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