大阪府立大学における産学官金連携

著者: 藤橋 雅尚 講演者: 稻池 稔弘  /  講演日: 2006年12月12日 /  カテゴリ: 講演会  /  更新日時: 2010年12月25日

 

化学部会(200612月度)研修会報告-1

  時 : 20061212日(土)
テーマ : 講演会

 

講演1 大阪府立大学における産官学金連携

稲池 稔弘 技術士(化学) 大阪府立大学産学官連携機構コーディネータ
稲池技術士事務所所長 (元 宇部興産株式会社研究部長) 

 

1)大阪府立大学の産官学連携について

大阪府立の3大学を再編・統合して平成17年に独立法人化した。7学部6研究科2機構からなっているが、本日は産学官連携機構について紹介する。
国の産学官連携施策は平成7年の科学技術基本法制定がスタートと言える。その後平成12年の産業技術力強化法制定、平成14年の知的財産基本法制定を受けて大幅な進捗が図られた。大阪府大では、平成4年の生物資源開発センター開設を端緒とし、平成14年に科学技術共同研究センターを全学組織とした。平成15年には産学官に金(金融)を加えた知的財産ブリッジセンターを設置して、産官学金による連携体制を構築し現在の産学官連携機構に続いている。

2)知的財産マネジメントセンター

産学官連携機構の一組織であり、知的財産の権利化および技術移転を担当している。コーディネータは22名だが、金融機関などからの派遣者が4名いるのが特徴である。
知的財産に関する活動はまず学内啓発から始めた。この啓発により教職員の意識改革がなされ、知的財産ブリッジセンター(当時)が有用であるとの認識を得て、発明の届出件数が大幅に増加する成果につながった。

大阪府大の教員が発明者となっている知的財産の創出実績は、過去10年間で1200件を越えているが、平成15年度以降は大学よりの出願が急増しており、これには知的財産マネジメントセンターの目利きが重要な役割を果たしている。なお、ライセンス契約は現在7件で約1000万円の収入がある。

3)産学官金連携システム

平成15年度から取り組んだこの産官学金連携システムは、公立大学であったことの特質を生かして地域密着型の連携としたことに大きな特徴があり、文科省の知財本部整備事業に公立で唯一認定された実績を持つ。具体的には、金融機関(信金、地方銀行、都市銀行、保険会社など)との連携、地方自治体や関連機関との連携、サテライト大学院での社会人教育などにより、地域産業に貢献している。特に地元信用金庫からの金融コーディネータと大学のコーディネータが、共同で中小企業を訪問して技術相談を行ったことにより発展を遂げた。

4)金融機関を加えた連携の効

中小企業は大学に対して、基盤技術の強化・高度化と理論的裏付け、新分野への進出支援などを期待している。金融機関と共同で行った技術相談により、金融機関はそれまで評価能力を持たなかった技術面の情報とその評価を得て、企業の正当な評価が可能となった結果、創業や新事業の支援機能を強化できた。特に中小企業で要望の多い農学系学部へのパイプが得られたことと、金融機関自体の知名度が報道により向上するなど多くの成果が得られた。
数値的に見ると、技術相談件数は平成11年度までは100/yであったが、平成16年度では900/y(内金融機関関連246/y)を越える実績に伸長できている。

5)このシステムへの評価と今後

中小企業から見た大学へのニーズは、技術相談、検証・有効性・安全性のデータ、基礎研究からの技術的ヒントの取得などである。具体的には新製品へのアイデアや売り方、下請からの脱却、材料・制御・設計・表面処理技術、静脈産業技術、後継者育成などである。
問題点は、中小企業は大学に対し“大学ならすべての技術が解決でき、ものづくりの技術がある”などの誤解を持ち、大学は“ビジネス感覚(契約遵守・守秘義務)に疎く、タイムスケジュールに甘い”などの問題点を持つことであり、今後解決が必要である。

まとめてみると、本事業による中小企業のメリッとは、産学連携を行えば経営革新法の承認を受け易いこと、金融機関が入ることによる安心感が大きいこと、など経営革新に有効なツールを得たことである。しかし技術的な相談については、多くが技術相談で解決でき技術士が解決できるとも言える。このように金融機関、大学、そして間に入る技術士などコーディネータにとって有益なシステムを構築できていると考えている。

最後に、成功例から考えると中小企業へのライセンシングはロイヤリティー方式の方が、イニシャルペイ方式よりも適合していると感じられるが、先行投資する勇気と基礎体力のある企業が果実を得る傾向も見えてきていることを申し上げる。

Q&A

Q 社会人教育はどれくらいの頻度と金額で行っているのか。

A 土曜と平日各一回である。費用は年100万円ほどである。

 

Q 技術士で対応の場合は顧問契約か、またフィーはどれくらいか。

A 具体的テーマを定めて契約することになろう。(フィーについてはここでは省略。)

                        文責 藤橋雅尚


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