高分子系傾斜材料の最新の動向

著者: 藤橋 雅尚 講演者: 上利 泰幸  /  講演日: 2006年04月20日 /  カテゴリ: 講演会  /  更新日時: 2010年12月25日

   

化学部会(20064月度)講演会報告-2

  時 : 2006420日(木)
テーマ : 講演会

 

講演2 高分子系傾斜材料の最新の動向

大阪市立工業研究所有機材料課 研究主幹 上利 泰幸 工学博士・技術士(化学)

 

傾斜機能材料について

金属とセラミックスの複合化に際して界面接着の問題点を解決するために、傾斜機能材料の概念が生まれた。自然界では、竹の維管束の密度が内外で異なっていることが、しなやかさの理由であることや、水晶体の色収差修正機能は傾斜構造に起因するなど、広く分布している構造である。高分子系傾斜材料では、ガラス繊維の密度を変えた積層構造では界面が無いことにより強い接着力が得られるなど、種々の材料で分子オーダー、原子オーダーでの傾斜構造が研究されている。

複合傾斜機能材料の製造方法には、電解法、遠心分離法、積層法、溶射法、有機無機ハイブリッド法がある。傾斜機能性高分子ブレンドの製造については、相溶ブレンド型と相分離ブレンド型がある。 相分離ブレンド型には、溶融偏析法(均一ブレンドし高温で長時間放置)、溶液偏析法(一体型塗料)、溶融流動偏析法、粉体塗布法、溶液拡散法などがある。一方相溶ブレンド型には、溶融拡散法(ポリマー同士の拡散は非常に遅い)、溶液拡散法、拡散重合法、ゲル延伸拡散法(ポリマーでは傾斜にできないがゲルなら傾斜構造となる)がある。 傾斜面の構造の調べ方について、顕微ラマン分析、FTIR-ATRDSC(Tg)SEM-EDXなどがあげられるが、顕微ラマン分析が最も適している。溶液拡散法で作製し、相分離させた傾斜材料の構造を調べると、海島型と島海型に分かれているだけでなく二重海島構造も見られ、理想的な相分離型傾斜材料であると確認できた。

傾斜機能材料の用途

傾斜構造を持つことにより発現する物性の特徴として、熱応力緩和機能(そりの抑制)、振動音響機能(防音制震)、光学的機能、医学生理的機能(人工臓器)、包装容器機能、化学的機能が期待できる。光学的機能発現の例として光ファイバーを傾斜化すると、全反射率が高まりシャープなパルスを送ることができる性質が得られるが、透明度でシリカファイバーに劣るので、ジョイント部に利用されていることに止まっている現状である。 その他水蒸気透過性が表面からと裏面からで異なる異方性(PEC/PBMA)や、生分解性の促進(PEO/ポリ乳酸系)などが得られる。今後の展開として、面方向に傾斜した機能性材料開発など、研究を進めていきたい。

Q&A

 Q セラミックスで傾斜させて、機能性をひきだすなどはどうか。

 A 薄く貼るのと傾斜構造を持たせることは異なっており、物理的耐久性は強くなるが電気的特性は悪い方に行くように考える。

文責 藤橋雅尚


著者プロフィール 著者
> 
主な経歴
> 
資格
> 
その他
>