環境影響評価制度とアセスメント -事例としての関西空港-

著者: 山本 泰三 講演者: 葉山 幸雄  /  講演日: 2010年12月14日 /  カテゴリ: 講演会  /  更新日時: 2012年08月18日

 

環境研究会例会・勉強会報告   101214

日 時:平成221214日(火)

  

テーマ 環境影響評価制度とアセスメント ―事例としての関西国際空港―

講 師:葉山 幸雄氏 ()大阪府みどり公社環境部長 元大阪府で環境アセスメント等を担当

 

1)大阪府の環境アセス制度と関西国際空港建設

1984年に府のアセスメント要綱ができ、その後国は1997年に環境影響評価法を制定。大阪府も条例を制定し1999年から施行した。その中で地域の最も大きな事業として注目を浴びた関西空港のアセスの経緯を解説して頂き、これに関連して質問意見を受ける形で勉強会を開催した。

24時間使用できる国際空港は関西地域の悲願であり、国は1968年に候補地の調査を開始した。有力視された神戸沖は騒音問題に対する地元の反対もあり、1974年に「泉州沖が最適」との答申が出された。関空関連事業の土砂採取事業、りんくうタウンと同時期に、空港の環境アセスメントが1986年に始まり、1994年に空港(1期)が開港した。空港の開港と同時期に第2期工事の調査検討が始まり、その後計画の認可から環境影響評価手続きを経て1999年に着工2006年に完成し、2007年から2期島の限定供用が始まった。

2)関空のアセスの概要と課題

2期計画の規模は、航空需要予測から、国際線2600万人、国内線1600万人、貨物は国際線を中心に160万トン/年と想定し、年間23万回の離発着回数と設定された。しかし、開港以来の離着陸回数は年間1213万回(内国際線は8万回弱)程度と横ばいである。また、航空機の騒音対策の進展などがあり、利便性で新幹線と競合する伊丹空港の存続、関空との統合運営など、方向が変化してきている。

空港計画に際して最大のテーマは騒音対策で、風向きにより北東、南西2方向どちらから離着陸しても海上で70dB以下(いわゆるうるささ指数WECPNL)になるよう、航路が設定された。開港後の航空機騒音の調査データによると、陸上部分では多くの地域で50db未満である。

その他、対岸のりんくうタウンでのNO寄与濃度、大阪湾でのCOD予測結果なども当初の計画通りの数値で、事後調査を含め環境アセスメントはうまく機能した。なお経営的には関空は厳しい状態が続いているが、これは環境アセスメントの制度とは別の課題として発生している。

3)ディスカッションを通じて

環境アセスメント制度について、環境の保全に有効であり、事後調査、戦略的アセスメント(SEA)などへと、仕組みは充実してきている。ただ、累積で67事業(道路、鉄道、廃棄物処理施設で半数以上)の環境アセスメントを実施したが、最近大阪府下では、案件が減少している。

 

環境アセスメントが環境影響だけでなく、地域の整備、活性化に大きな影響を持つことから、多くの意見交換がなされた。環境アセスメントの対象事業になると、調査から始まって住民意見を聞き、これを反映させることになるため、手続き時間を確保する必要があり、環境影響評価に要する、時間、費用は事業者にとってかなりの負担になることも事実である。

また、アセスメント対象案件については、事業規模が大きく、環境に与える影響も大きいことから、地域住民、関係者の理解と協力を得て進めることが、事業を円滑に進めるためにも重要である。環境影響評価は事業計画を推進するために環境面での負の要素について丁寧に検討し、対策することが目的であるが、そのために事業計画をスムーズに進めるという本来の目的とのバランスが必要になる。

言い替えれば、経済がグローバル化し、国際競争の中で事業性を評価し、事業が地域の活性化につながるかなどについて、環境アセスメントとあわせ検討が必要である。本会では「関西を元気に! 技術士の提言」を新聞に連載しており、関西3空港についても取り上げた。今回の勉強会を通じて多くのヒントを得ることが出来、今後の活動につなげたい。

(文責 山本泰三)

図表:航空機の発着回数は関西国際空港会社のホームページ

その他は講演資料より転載


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