元気な名古屋を考える -関西地区とどう違うか-

著者: 山本 泰三 講演者: 古賀 正雄、末利 銕意、藤橋 雅尚、高橋 威、 藤井 武、 山本 泰三  /  講演日: 2005年08月09日 /  カテゴリ: 講演会  /  更新日時: 2012年08月17日

 

環境研究会【名古屋地区研修旅行・報告会】 050710

研修旅行平成1710日(日)~11日(月)
報  告  会:平成17年8月9日(火)
場  所:アーバネックス備後町ビル3階ホール

     

テーマ元気な名古屋地区を考える-関西地区とどう違うか-

1.はじめに

今年の研修旅行を名古屋地区にしようと決めたのが4月、愛知万博の見学を兼ねて元気な名古屋地区の実情を見聞したいと思った。候補地として2月に開港した中部国際空港(セントレア)、日本一の貿易額を誇る名古屋港、そして、経済活動のインフラとしての高速道路網を候補地に選んだ。また、名古屋港に残された藤前干潟、高速道路の工事現場を組み込むことができた。
5月に旅程を決めて募集し、6月上旬には大型バスでの42名の大調査団が確定した。

見学旅行の詳細と写真等は、資料集参照

2.愛・地球博 (発表:古賀正雄技術士(機械)

11時過ぎに現地に到着、17時までの自由行動の間にそれぞれが興味のある地域、展示などを楽しんだ。その後、全員でNEDO館の燃料電池など新エネルギー実証プラントを見学した。「メタン発酵システム」や「高温ガス化システム」など動く機械の側には行けずややもの足らなかった。250kW×2基のMCFC、200kWのSOFCなどの燃料電池は設備が大きく、すぐの実用化は難しそうとのコメントがあった。

また、会場の概要として5つのコンセプトをもとに108カ国と5国際機関の6つに分けられた「グローバル・コモン」の構成などの説明や、ロシア館のマンモス親子の写真紹介があった。

3.中部国際空港(セントレア)   (発表:末利銕意技術士(化学、総合))

バスによる空港内の施設見学、その後1時間の空港ビルの見学ツアーができた。名古屋駅から名鉄で30分足らずの場所にあり、高速道路も整備されている。新しい観光地として大変な賑わいが続いている。動く歩道で0.5階分を移動する仕組み、レストランなど集客ゾーンなどをVTRの映写で再確認した。

  会場の図(パンフレットより)

 

中部国際空港は、同規模の関空との比較でその優位性が見えてくる。立地条件のよさ、機能性、利便性の追求、コストダウン努力などもあり、建設費は関空の3分の1程度に抑え、乗り継ぎの利便性、着陸料の抑制など、「コストは作るもの」との考え方で開港したことが報告された。また、航空貨物も成田や関空に80%以上依存していたものを取り戻そうとの意図が明確である。

4.藤前干潟  (発表藤橋雅尚技術士(化学、総合))

名古屋港の奥部、二つの川の河口に大量に土砂が流入し、そこに生態系の高い回復力が生まれた干潟ができ、日本でも最も種類の多い渡り鳥の飛来地ルートとなっている。
この地は1981年に港湾計画の中で廃棄物処分用地になったが、その後の環境アセスメントの中で、市長の慎重な姿勢から、公聴会を3回開催した末、最終的に1999年に埋立事業中止を決定した。2002年には、ラムサール条約の登録湿地として登録し、これを保全している。

一方、名古屋市は「ごみ非常事態宣言」を発表し、資源回収を進め、ごみの焼却量と埋立量を減らす取組みを推進した結果、大都市の中では最も優れた実績を残すまでに改善された。ちなみに、大阪市、神戸市は市民一人当たりの資源以外のごみ量は名古屋市より80%程度も多いとのことである。ただ、現地を見学した結果、干潟が陸地化する懸念もあるのではとの報告であった。

5.名古屋港  (発表:高橋 威技術士(化学))

名古屋港の見学にあたり、名古屋港管理組合(行政の組織)では、2時間半の移動、見学スケジュールを分刻みで準備対応してくださり、VIP用のポートオブ名古屋Ⅱ号に乗船して幹部の方が直接、案内・解説して下さった。
発表は、かって名古屋港の上を通る伊勢湾岸道路の下にある工場の補償調査プロジェクトや、エリトリア(アフリカ)のODAとして港湾整備事業に関わられた高橋技術士にお願いした。

名古屋港はトヨタ自動車などの輸出基地として貿易額では日本一、コンテナ取扱量でも、すでに神戸、大阪を抜き、東京、横浜に次いでわが国第3位、着実に実績を残している。神戸や大阪の伸びが低いのは、地域の勢いの他、高速道路網の整備が遅れていることも要因と思われる。

6.高速道路網と道路工事現場 (発表:藤井 武技術士(建設))

今回の研修旅行では、名古屋地域での計画も含めた高速道路ネットワークの充実振りが良く分かった。中部国際空港や愛知万博などの要素が、ネットワーク化のスピードアップにうまく活かされている。名古屋環状2号線(東南部)15kmの工事現場を見学した。現地の状況から、東京との情報交換の中で国のお金を引き出して事業が順調に進んでいるとの意見もあった。環境面からの捉え方として、渋滞解消による大気汚染物質などの削減、振動・騒音の低減などのプラス面がうまく出ているが、技術的に特別という訳ではない。今の道路網の充実振りは名古屋人の気性にもより、コンセンサス作りを着実に行い、総論賛成、各論反対という状況ではなく、実績を積み重ねている。近畿地方のマスタープランの貧弱さが益々地域の活力の差を広げているとの指摘は当を得ていると思わざるをえない。

  名古屋地域の道路の整備は充実

  近畿地区の構想は何時実現できるか?

おわりに

今回の研修旅行は梅雨の時期、天候が心配されたが、好天に恵まれた。また、2日目は強行軍が懸念されたが、高速道路網が整備され、また、名古屋港管理組合、高速道路工事現場など受入れ側の対応が極めて行き届き、移動もスムーズで予定どおり大阪に帰着できた。

折角の研修であり、担当を分担して報告会を開催、それぞれ専門的な立場での分析、発表により名古屋が何故元気か、関西がどの点で遅れてしまったのかを再確認できた。報告会終了後の懇親会では、旅行に参加できなかった方を含め、議論が大いに盛り上がった。

  山本 泰三記)


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