こうべバイオガス事業 見学研修会

著者: 藤橋 雅尚 講演者: 森田 正三  /  講演日: 2011年02月17日 /  カテゴリ: 見学会  /  更新日時: 2011年03月19日

 

化学部会・環境研究会・近畿支部 共催(20112月度)見学会報告

  時 : 2011217日(木)
  所 : 神戸市建設局東灘処理場 こうべバイオガス

  

テーマ :神戸のバイオガス施設 都市ガス化施設の、見学と技術講演会

講演 こうべバイオガス事業について

森田 正三  神戸市建設局 東水環境センター 専門役

  

はじめに

神戸市は、人口155万人で50万m3/dの汚水を7箇所の処理場で処理しており、ここ東灘処理場は市最大の施設である。阪神淡路大震災の際は壊滅的な被害を受け、緊急時対応として運河を利用した処理を100日間行ったが、被災施設は4年後には完全復旧している。

処理水は滅菌後、海へ放流するが、一部を再生水等に利用している。消化ガスは脱硫して消化タンクの加温など下水処理関係に利用する以外に、天然ガス自動車への供給、さらに大阪ガスの中圧配管に直接注入することにより一般家庭(およそ2000軒相当分)にも供給している。廃棄物である焼却灰は舗装のフィラー等に利用するなどリサイクルに努めている。
本日はバイオガス関連の施設についてお話しし、施設を見学していただく。

汚水処理のフロー

汚水処理の基本となる水処理フローは次の通りである。
汚水管→沈砂池→①最初沈殿池→活性汚泥処理池→②最終沈殿池→塩素混和池→放流

上記フローの中で①②の工程から発生する汚泥は、減量・安定化を目的として消化工程に導入してメタン発酵を行い、消化ガスはメタン純度98%まで精製して「こうべバイオガス」とし、処理場内、天然ガス自動車の燃料、および都市ガスとして利用している。消化反応系の水処理フローは、次である。
    
③消化(メタン発酵)タンク→汚泥脱水機→脱水ケーキ搬出

バイオガスの「こうべバイオガス」としての利用

③の工程で発生する消化ガスは不純物を含んでいるので、消化ガス処理系で精製する。
④消化ガス精製装置→⑤高度精製装置→熱量調整→付臭→都市ガス

④の消化ガス精製工程を経たガスは「こうべバイオガス」として、場内ボイラー・空調の利用に加え、日本で初めてバイオガスを天然ガス自動車燃料(バス、ゴミ収集車、民間用)として販売している。しかし、まだ消化ガスが余るので、⑤高度精製処理装置を整備し、これも日本で初めて、都市ガスとしての販売(ガス管に直接注入)を201010月から開始した。

表1 ガス組成

消化工程は消化タンク(10,000m3)3基を使用し、中温発酵(390.2MPa)の条件で機械攪拌下に行っている。消化ガス中には表1に示す通りメタン以外に二酸化炭素、硫化水素、シロキサンなどが含まれており、発熱量5700kcal/m3程度である。硫化水素は燃焼工程でSOxとなり障害を起こす。シロキサンは図1のような単位構造を持った化合物の総称であるが、n=5の環状シロキサンは化粧品やリンス等の乳化剤を起源として、消化ガス中に混入し除去しないとエンジン内にSiO2として固着して摩耗等の障害を起こす厄介者である。

   図1 ポリジメチルシロキサン

当処理場で発生する消化ガスは約380m3/yであるが、場内消費量は半分程度のため外部への販売が必要である。このため2004年から天然ガス自動車へのバイオガス供給の検討を始め2006年に工事開始、2008年から供給を開始した。

精製方法は、メタンと二酸化炭素の水に対する溶解度の差を利用して二酸化炭素を水に溶解して除去し、同時に硫化水素とシロキサンも水に溶解させる高圧水吸収法である。具体的には0.9MPaに加圧した消化ガスを吸収塔中の下から吹き込み、0.9MPaに加圧した水を吸収塔中の上から流すことにより、メタン以外の成分を水で抽出して除去する方式(図2)である。得られた精製メタンガスは、表2の「こうべバイオガス」であり、天然ガス自動車用の管理値を満足するので、ガスタンクにホールドして場内利用と天然ガスステーション(20MPaに加圧)への供給を行う。なお、工事は国の助成を得て実施しているが、本事業は国交省や経産省からも大臣賞を受けている。

  図2 消化ガス系

都市ガスとしての利用

だ消化ガスの35%が未利用のため100%利用を目指して、大阪ガス、神鋼環境ソリューションと三者協働により、バイオガスを都市ガス導管に注入する研究を、2008年にスタートした。都市ガス13Aと同品質とするためには、酸素や二酸化炭素の更なる除去など高度精製に加え、熱量の調整、付臭(都市ガスと同一臭)が必要である。

研究の結果、酸素は水素(電気分解で製造)との反応による除去、二酸化炭素は、触媒による吸着、熱量の調整はプロパンの添加で対応する方式で、2009年に国の全額助成(3億円)を得て建設工事を開始し201010月から消化ガスを都市ガスとして大阪ガスのパイプラインに直接注入するプラントが稼働を始めた。消化ガスは生物由来のためカーボンフリーであり、日本で最初のプラントのため見学者も多い。

  表2 都市ガスへの精製

施設の見学

震災施設、消化タンク、バイオガス施設(精製,タンク,充填,注入)、遊歩道見学。

Q&A

Q 天然ガス自動車への卸し単価47\/m3とのことだが償却費を入れてもペイするのか

A 維持管理費はペイ。建設は下水道事業として国補助を得て建設し、料金で回収している。

Q 酸素を0.01%以下にする必要性はなにか。また硫化水素のメンテナンスへの影響は

A 酸素の基準は大阪ガスと同一品質にするため。硫化水素は十分に除去できている。

Q 抽出で除去したCO2の行方は。

A 脱気塔で脱気ガスは、既存の活性炭処理施設に送られて処理され大気開放されている。

Q 汚泥の減少効果はどれくらいか。また汚泥焼却灰の利用は。

A 東灘では汚泥発生量約800/dに対し、脱水後の搬送汚泥は約80t/dである。汚泥焼却灰は、アスファルトフィラー・インターロッキングなど、約40%を有効利用している。

Q 特許について、他の自治体が使うときに障害とならないか。

A 神戸市・神鋼の2者と、()土木研究所も加えた3者の特許とがある。営業は神鋼が行っているが、他者が使うときは照会等があり、通常は特許使用を許可すると思われる。

(文責 藤橋雅尚  監修 森田正三


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