ダイセル方式生産革新の見学会

著者: 藤橋 雅尚 講演者: 安藤 隆彦、小園 英俊  /  講演日: 2013年02月05日 /  カテゴリ: 見学会  /  更新日時: 2013年03月21日

化学部会(2013月度)見学・研修会報告

  時 : 201325日(火) 14:0016:30
  所 :株式会社ダイセル 網干工場

テーマ :ダイセル方式生産革新の見学会

 

講演1 工場紹介

安藤隆彦 網干工場長

網干工場は創業105年、ダイセル方式生産革新については実行後既に20年近く経過しているが、これまでに7000人を越えるご見学をいただいた。
工場革新を手がけた頃、種々の生産革新方式があったけれどもプロセス型プラントには馴染まなかった。そのため、自分たちで手法を開発し生産革新を行ってきた結果、生産性向上目標2倍に対して3倍の実績を得ている。
革新は立ち止まった瞬間に止まるので、革新を続けて行くためにも、ご批判・ご提言をお願いしたい。

 

講演2 ダイセル方式生産革新について

小園英俊 生産技術室 生産革新センター所長 兼 組立加工センター所長

1.網干工場概要

ダイセルは1919年にセルロイド会社8社合併により設立した。セルロイドメーカーから始まっているが、現在は、有機化学品、酢酸セルロース、エンジニアリングプラスチック、火薬などの製造を行っている。主な工場は6つあるが、それぞれの工場の生産品目は異なっており、当網干工場の主力製品は酢酸セルロース、酢酸とその誘導体などであり、原料から一貫生産している。その他に、現在増築中のため閉鎖中の教育訓練センターは、技能習得設備として好評いただいている。

敷地は、北部・中部・南部に分かれている。
北部エリアは、以前セルロイドを製造していたが現在は開発準備地である。
中部エリアはセルロース関連の製造エリアであり、フィルタートウ、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体のプラントがある。
南部エリアは、酢酸を中心とした有機プラントの他に、石炭ボイラーと天然ガスタービンを使って、発電ともに蒸気の発生を行っている。
生産革新以前は、各製造プラントをそれぞれの操作室で運転を実施していたが、現在は、統合生産センターで集中制御している。なお、近隣の広畑工場に、蒸気や電力などの供給を行っている。

 

2.生産の革新について

生産革新を網干工場から着手したひとつのきっかけは、セルロイドの製造から燃えにくい酢酸セルロースの製造に移行(1951 年)した頃に入社されたメンバーが、1990年代の半ばから大量退職となることであった。メンバーの持っているノウハウを引き継いで生かしたいと考えたことから、それぞれの方の持つ情報を調査し体系化することが必要であった。

ベテランオペレーターの持つ知見や技術、異常状態を事前察知し対応する情報などについて調査を進めていくと、非常に多くの意思決定をしており新人では的確に対応できるものではないことがわかってきた。このため工場を変えるというビジョンに立ち「革新的なものづくり」のために、ものづくりの原点に立ち返る必要があった。しかし、現状否定・自己否定から入る必要があり、自己否定は非常に難しいという側面が障害となった。
解決のため「こんな工場にしたいという思いを持つ」「やれない理由ではなくやれる方法を考える」「大胆な発想をする」ことを基本に置く考え方で、業務の総点検を行なった。

総点検の過程で「見える」を実践するために、顕在化したトラブルだけでなく、オペレーターが未然に行っていた予防措置も潜在トラブルと考えることにした。これらのトラブルは、作業日誌から抽出したが、当初は全てのトラブルが作業日誌に記載されていなかったため、結果から見ると、トラブル低減を実施しても一時的にトラブル件数が増えた。
しかし、安定化を進めていくことで、作業日誌への記載が5W1Hで記載されるとともに、例えば「ポンプが詰まったから対応した」のが「ポンプが詰まりそうだから対応した」といった予防措置の記載へと変化があった。また、プロセス型の化学プラントで、最も不安定で作業量の多い立ち上げなどの非定常作業についても、作業負荷の低減に取り組むとともに、標準化を進めていった。

現在、全てのプラントを統合生産センターに集約し、コントロールルームで集中管理している。もちろんITによる集中制御を行っているが、これは運転標準化した結果を後戻りしないための仕組みである。運転用の画面は、重要度に応じて異常・変調の表示を多段階に分けて行う方式を採用し、誰もが同じレベルでオペレーションができるようになっている。変色している部分をクリックしていくと、状況と関連マニュアルが表示され、細かいノウハウの共有化(見える化)に成功した。

 

3.総合生産センター見学

建物は全体を陽圧にし、コントロールルームとスタッフルームを完全に切り離している。コントロールルーム(全体で一室)では、3エリアに分かれて操作している。シフトリーダーは、一歩引いたところに位置し、オペレーティングメンバー、現場メンバーに分かれて操作していた。

       

設備的には、万が一水系のトラブルが発生しても、コンピューターに影響しないように、水配管のあるゾーンとないゾーンを隔壁で分けていることや、自家発電を含めて電源を3重化しているなどの特徴がある。

 

Q&A

Q 生産性が2倍になったとのことだが何をベースにして2倍なのか。
A 一人あたりの売上高または生産量で評価している。

Q 労災はどうなったか。
A 労災は減少した。

Q 収率面では、標準をどのあたりに置いているのか、またばらつきは。
A 若干高く目標設定している。ばらつきはまだあると考えており、継続した改善を進めている。

Q プラントのコントロールについて、センサーの故障等への配慮は。
A 従前から変えていないが、エマージェンシーを考慮し、複数センサーでインターロックを作動させている。

Q 作業負荷やアラーム等がどうなったか教えて欲しい。
A 作業負荷90%減、一人あたり監視範囲3倍、スタートアップや切替時間1/2以下、ノウハウの標準化800万ケース、などである。

Q 投資についてはどうか。
A 具体的には申し上げられないが、コンピューターの更新や建物が主体である。

                                 

(文責 藤橋雅尚)


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