株式会社村田製作所 野洲事業所 見学会

著者: 藤橋 雅尚  /  講演者: 大宮 季武 /  講演日: 2017年10月6日 /  カテゴリ: 化学部会 > 見学会  /  更新日時: 2017年11月21日

 

近畿本部 化学部会(201710月度) 見学・講演会報告

  2017106日(金) 13:3017:30
  株式会社村田製作所 野洲事業所

 

1.オリエンテーション:会社と事業所の紹介

本日の世話役である、村田製作所 久保田正博技術士から、同社はチップ積層セラミックコンデンサをはじめとする電子部品のメーカーであること、本日は、野洲事業所にある研究所と生産工場を見学していただくことと、スケジュールなどの説明がなされた。

2.研究所の見学

詳細については、機密に触れる部分が多いため省略するが、分析に関する部門では、有機・無機の組成分析、異物の影響、熱分析、比表面積、表面の状態など性能に影響する因子に対応して多数の部門があり、それぞれの部門毎に、ポスター掲示をベースにして説明を受け質疑がなされた。

製品に関する部門では、各種の微細加工装置を使った加工、セラミック層の極表面にある元素の影響やニッケル層の状態の分析などを、電界放射電子線マイクロアナライザー、X線光電子分光装置、走査型電子顕微鏡など、各種機器を使った研究の紹介を受け、同様に質疑が行われた。

3.工場の見学

ロールペースト工程の見学を行った。調合→分散→異物除去→検査の工程は、全てクラス1000のクリーンルームで行っており、最終の中間製品包装工程と原料の計量工程を見せていただいた。調合については原料の品種が多いことと、ごくわずかに加える不純物の割合が品質に大きく影響することから、人手による計量方式である。人的ミスを防ぐため、コンピューターによる品名と計量予定量の指示を受けて、ゼロ合わせ法(所定量計量できると表示がゼロになる方式)で行っている。工場での分析については、開発部門での分析以外のものとして、工程管理を担当している。特に、洗浄の際のコンタミ防止は非常に重要であるため、留意事項や洗浄終了の判断について説明を受けた。

4.講演:村田製作所の最先端セラミック技術

講演者: 大宮 季武 マテリアル技術センター 材料プロセス開発部 部長

1)当社の概要

当社のスローガンは、「Innovator in Electronics」である。売上は1.1兆円を超えており、人員は、国内約25,000人、国外約35,000人の規模である。技術面では電子部品の製造が主体であり主力はコンデンサである。シェアの面では、セラミックコンデンサでは40%、ショックセンサでは95%を占める。コンデンサは電子機器に多量に使われており、スマホで750個など、小さな部品であるがたくさん使われている。

近年は、コンデンサだけに依存する業態から抜け出すために、M&Aも活用して通信モジュールを増やしており、将来的には通信事業全般に軸足を移す方向で進めている。全国に4事業所を展開しており、本日来ていただいた野洲事業所の役割は、製造関係では製品ならびに原料の供給と生産機器の製造、開発関連では基盤技術の開発と、生産機器の開発である。

2)セラミックス電子技術開発の歴史

当社は1944年に碍子でスタートした。1945年にコンデンサの製造を開始し、1971年に積層コンデンサを始めた。積層コンデンサのサイズは使用する電子機器の小型化に伴いどんどん小さくなってきている。(セラミック層サイズの規格を4桁の数字で表し、0402とは大きさ0.4×0.2mmを表す)。

小型化の要請に伴い、2013年頃から0402の開発を開始し、現在の主力製品である0603からの置き換わりが進んでいる状態である。積層セラミックスの市場は、使用する機器の性能が向上することを支えるために求められる機能の向上と、規模の拡大が進み、まだまだ成長していくと考えている。(セラミック素子薄層化関連の技術的な説明については、9月度の化学部会報告にあるので省略)

当社は積層コンデンサではリーダー的存在であり、材料の開発、誘電体層の設計、ペースト材料の設計など、細粒化技術を活用する分野で努力していくことが一つの目標である。さらに、当社の社是にある「技術を錬磨し、科学的管理を実践、独自の製品を供給・・・」に基づいて、オートモービル、ヘルスケア、電力などのエネルギー分野、IOT分野などへの展開を図っており、通信関連事業全般分に存在感のある企業となることを目指している。

質疑

Q 新しい分野に移行するにはその分野の経験も必要だが、年齢層も含めてどんな具合か。

A 平均年齢は30台前半であるが、経験者の補充も合わせて行っている。

Q 薄膜化を進めていく目的は何か

A 他社と共通すると思うが、省資源につながることや、同じ機能以上を持って小型化することは常に求められるので、薄層化で対応を進めてきた。

Q シリコン基板にコンデンサを組み込むことが出来ることから、一時期コンデンサ不要論が提唱されていたが、現状はどうか。

A 技術的には可能であるが、必要なコンデンサ数が多いこと、加工に手間がかかり不良品が出れば全部がだめになるリスクがあることなどを勘案して、部品としてのセラミックコンデンサは必要とされている。

Q 薄層化などには、材料開発が重要と考えられるが、どの程度力を入れておられるか。

A 300人規模である。

Q 環境関連については、どう考えておられるか。

A 焼き物が多いので、温度を下げる方向の技術開発、廃液減少、鉛フリーなどが主体である。

Q 開発に関しての環境配慮はどうか。

A 上記に加えて、大量の電気を使うことを意識させて、運営している。

Q 製造用の機材を作っておられるとのことだが、外販されているのか。

A 外販はしていない。

Q 国際的な展開のためには、英語が重要と思うがどのようにされているか。

A だんだん強化されてきたレベルである。

文責 藤橋雅尚 監修 久保田正博