インターシップ支援活動(対象:技術系の学生・生徒)の紹介 3.兵庫県立の工業高等学校における、インターンシップ支援活動

著者: 藤橋 雅尚 講演者:  /  カテゴリ: 産学官民  /  更新日時: 2011年02月24日

 

3.1 社会貢献としてのインターンシップ支援活動の拡充検討

兵庫県立大学でのインターシップ支援活動の中で、中小規模の製造業の中には 次代を担う人材養成機関として工業高等学校に期待 している企業も多い実態が明らかになってきた。工業高等学校におけるインターンシップの実態を調査して見ると、教諭が安全教育・礼儀などを事前にきちんと指導しているが、受入企業の確保に苦労し、縁故でやっと確保できている状態であった。このため、実習先企業として工業高等学校の授業と内容とは、直接関係のない職種の企業を選ぶなどの例もあることがわかってきた。

この調査結果を受け兵庫県技術士会は、大学のインターンシップ支援活動で得たノウハウを活用して、工業高等学校のインターンシップ支援活動を行うとの方向付けを行った。しかしこの支援活動では、受入可能な企業を調査し、その企業に出向いて説明し受入をお願いするためには、交通費などの資金が必要であることが、問題点として上げられた。この資金的なネックを解消するため、公的な助成金を得る検討からスタートした。


3.2 助成金制度の調査

助成金制度について調査した結果、阪神大震災を機に盛り上がったボランティア活動のうねりを受けて、各界からの資金拠出により設立された「ひょうごボランタリープラザ ( ※1 ) 」の助成を受けることを当面の目標として選択した。
     (※1 : 社会福祉法人 兵庫県社会福祉協議会の内部組織)

公的な助成金を受託できるまでの過程で、種々曲折があり案の練り直しも行ったが、2006年度募集の 「行政とNPOの協働事業の助成 ( NPO提案型:3年計画 ) 」 に応募し、採択を受けることができた。この助成金は行政との協同が前提となっているので、協働の相手方の選択に至る過程とその内容を次に示す。

3.3 行政とNPOの協働事業の選択

インターンシップ支援事業の提案に際して、協働の相手方になっていただける行政機関を調査した結果、兵庫県内の教育行政の中心的な存在である兵庫県教育委員会(県立の学校を管轄)を候補として選択し、提案事業を 「兵庫県立工業高等学校のインターンシップ支援」 に絞り込んで折衝を行った。

教育委員会としては、普通科を含む全ての高等学校にインターンシップを導入することが大前提であったが、工業高等学校におけるインターンシップの特殊事情(教育効果の高い製造業・工事業などに属する受入企業の確保が困難)を配慮して、快く協働のご了解をいただけた。

このように協働の方向付けがなされ助成金に応募した結果、前記のとおり採択を受けることができて協働事業の実行に入り、現在3年計画の2年目の活動を行っている。

3.4 提案した事業の概要

提案した事業の概要を図に示すが、ことばで説明すると次のとおりである。

A ) 教育委員会 (含:工業高等学校)と兵庫県技術士会が協働で、 インターンシップに協力する 製造業を中心とした、 県下の 元気のよい中堅・中小企業 ( 大規模企業も含む ) や団体などを、インターンシップ受入登録企業としてデータベース化する。

B ) 各工業高校はインターネットを使って企業を検索し、それぞれの企業に受入を依頼してインターンシップを実行する。

この事業は3年計画 ( 毎年審査を受けて更新 ) であるが、構築されたデータベースを活用する効果として、次を期待している。

① 企業において 将来の中核人材となることを期待されている工業高等学校の生徒は、自己の個性や目標に適合したインターンシップ先を、 データベースを活用することにより 幅広く選択 することが可能となる。

② 自己に適合したインターンシップを経験した生徒は、適切な社会経験を得ることができ、卒業後の職業選択におけるミスマッチ防止など 教育効果の向上 が見込まれる。

システム運用上のリスクとして安全問題がある。兵庫県立大学のインターンシップでは、兵庫県技術士会が学生に安全教育を行う方式を採用したが、工業高等学校では既に安全教育を実施している学校もあることから、不要な場合も多い。このため、生徒への安全教育やハザード時の対応に関する事項は学校にまかせることとし、当会としては要請があれば安全教育を行えることを伝えることとした。なお、企業に対しては登録を依頼する際、担当者に面談して安全への対応をお願いするとともに、希望があればお手伝いする方式とした。


3.5 年次毎の事業計画と、その実施

 3年計画の概要は次のとおりである。

   第1年次 : 行政が協働して取り組める事業計画の作成
   第2年次 : 事業化に向けた具体的計画の策定
   第3年次 : 事業の実行

初年度の主な事業計画とその実績は、次のとおりであった。

  ① 協働事業の認知を得ることと各工業高校への周知
     教育委員会の協力を得て各工業高等学校に周知できた。

  ② 情報の収集とその整理

県下12校を訪問調査した。全生徒を対象として授業時間内に実施している例、有志生徒を対象として夏休みに実施している例、全く実施していない例など様々であった。
企業・団体については、インターンシップを知らないか、知っていても参加に、二の足を踏んでいる事例が多かった。

  ③ データベースの原案作成とその構築

兵庫県技術士会のホームページ( http://www.hpea-npo.com/ )にデータベースを設置した。なお、公開予定のデータの中に企業担当者の個人情報に該当する事項が含まれるため、検索に際してはパスワードを要求する方式とした。
    (検索画面の例を図に示す)

  ④ 協力いただける企業の登録

特に問題は無かった。 

  ⑤ データベースの試験運用に協力いただける工業高等学校の決定

2校の協力を得ることができ、協働して立案と改善を行った。

           


3.6 データベース構築の完成に向けての方針

第2年次の目標は、試験運用に協力いただいた高等学校で利用する前提で、実用レベルの企業数の登録を図りながら、データベースの登録事項や検索に際しての問題点を抽出し、登録するべき内容や検索方法などの改善を図ることである。

第3年次の目標は、県内に立地する全工業高等学校での利用に対応できる企業数の登録である。

現在第2年次の活動中であるが試験運用高等学校から、実習対象企業は可能な限り生徒の通学範囲に立地する企業を選択したいとの要望を受けている。この要望への対応は第2年次の事業としては容易である。しかし第3年次では製造業などの立地が少ない地域の工業高等学校もあるため、困難な目標となる。とはいえ全県的に活用が可能な登録数を持つデータベースの構築を、目標とする方針で活動している。

3.7 この事業への協力のお願い

この事業はまだ実行の途上であり、これからの活動が大きな意味を持つと考えております。そのためにはデータベース登録企業をご紹介いただくことが大切ですので、本事業に興味をお持ちの企業や団体の方は是非ご連絡をお願いいたします。

連絡先は次のとおりです。
   藤橋 雅尚   m.fujihashi@nifty.com
   または、 NPO 法人 兵庫県技術士会  kobeinfo@hpea-npo.com


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