3)地域の役割分担と推進計画を明確に
著者: 環境研究会 講演者: 環境研究会 / 講演日: 2010年09月02日 / カテゴリ: 連載記事(フジサンケイビジネスアイ) / 更新日時: 2012年10月12日
フジサンケイビジネスアイ 連載記事
関西を元気に!
掲載日 2010.09.02
技術士の提言-3
地域の役割分担と推進計画を明確に
(関西には、目標が見えない)
司馬遼太郎の小説「坂の上の雲」にあるように、明治維新を経た日本は、欧米を目標にして経済力を養った。1980年代には世界のトップレベルになったが、同時に次の目標を見失った。91年にバブル崩壊があり、その後の「失われた20年」で経済成長は停滞。国力・経済力を示すGDP(国内総生産)も相対的に下がり続けている。
その後、韓国や中国の経済成長、グローバル化に伴い、わが国の経済は疲弊、大企業は利益を維持しているものの、雇用・労働環境は悪化し、若者を中心に非正規社員が全体の3分の1を占め、ゆとりある生活を維持できない低賃金層が拡大した。
一方で、65歳以上の人口が21%以上という超高齢化社会に突入、老後の生活を保障する医療保険や年金の制度は少子高齢化の進展に伴い、赤字国債を発行しないと賄えない状況に陥った。政党は消費税アップを口にすると、選挙に負ける。従来から論理立てた説明を国民にしてこなかったし、これを伝えるマスコミが役割を果たしていないように思う。
目標の見えない関西
長い間政治経済の中心であった関西(近畿)は、明治維新を経て、戦後の経済成長の中で東京一極集中の構造に飲み込まれた。しかし、地政学的に見て関西は西日本、アジアに向けての中心である。
東京には日本の政治経済の、また世界経済の中心としての目標がある。中部は自動車を筆頭に、地域として工業生産額日本一が続き、ものづくりの中心との自負がある。関西には歴史と文化の中心としての財産があるが、これを生かし支えるだけの経済力を再構築しなければ、自立は困難だ。
道州制を導入して関西州に、という動きはあるが、これは関西自立の手段であって、目標ではない。目標を達成するために自立できるインフラ整備を進めることが先決である。
8月2日、各論の議論を深めるためにシンポジウム「関西の高速道路網を考える」を技術士会環境研究会主催で開いた。
驚くことに、関西には地方自治体ごとの計画をモザイク上に張り合わせたプランがあるだけで、どこから整備すべきかという優先順位を戦略化する土壌がないとの指摘があった。
阪神高速道路株式会社のトップは、「高速道路が接続していないミッシングリンクの整備は何年かかってもやり遂げる。」と発言している。グローバル化の中で経済環境は激変している。中国に倣って、費用効果、建設スピードを重視して計画を抜本的に見直し、再構築し、合意形成が必須であるのに、これでは手の打ちようがない。関西全体の雰囲気を象徴しているといえる。
シンポジウム「関西の高速道路網を考える」8月2日、大阪市中央区
社会インフラの総点検を
「ISO9001」品質マネジメントシステムを例に取ると、経営のツールとして世界で100万件以上(日本では5万件)普及している。
同システムは、まず経営者が方針を定め、目標作成を全社に指示することから動き出す。
関西のインフラ整備の目標は何か,現時点でどうあるべきかを過去の経緯を見直し、国際的にどう評価できるかを点検し、目標を考え、地域の役割分担と推進計画を明確化する必要がある。
そこで日本技術士会近畿支部は、緊急シンポジウムを9月16日(木)に開催する。基調講演とディスカッションのコーディネーターはエネルギー環境問題および関西の地域開発を指導している鈴木胖・地球環境戦略研究機関関西研究センター所長、パネリストは産学及び技術士の3人に依頼し、インターネットなどでも多面的に情報発信する予定だ。関西復活のきっかけになることを願っている。
編集協力/日本技術士会近畿支部環境研究会
>>>次号 4)技術士全国大会で情報発信を