2)グローバル化見据えた国家戦略を

著者: 環境研究会 講演者: 環境研究会  /  講演日: 2010年08月19日 /  カテゴリ: 連載記事(フジサンケイビジネスアイ)  /  更新日時: 2012年10月12日

 

フジサンケイビジネスアイ 連載記事

関西を元気に! 

掲載日  2010.08.19

技術士の提言-2

グローバル化見据えた国家戦略を

変化のスピード増す中国のインフラ整備

中国における都市間の高速道路網は6万5千kmを越えた。計画では8万5千kmに延長され、完成すると、全国の20万人以上の都市の過半が高速道路網に入る。
上海で行われた日中技術交流会議では、東側の浦東国際空港が完成、次に西側の虹橋地区でも空港の整備が進んでいると報告された。これを聞いて数年内に完成するのかと早合点したが、巨大な虹橋国際空港は今春開港ずみ。地下鉄も直結していた。空港に隣接する虹橋駅(上海西駅)も完成。7月から時速350kmの新幹線が南京まで開通している。

インターネットのウィキペディアによると、上海から北京までの1300km以上が2011年中には開通する。新幹線によって4時間で移動できると飛行機に依存しないようになる。

  

 中国の高速道路計画は総延長85kmのうち80%以上が完成

 

北京―天津間120kmの新幹線が最初に計画された時、日独仏のし烈な売り込み競争が行われた。05年に着工され、08年に開業して2年しか経っていないにもかかわらず、今度は中国が新幹線を海外に売り込もうとしている。「技術のパクリではないか」との声もあるが、国際的に通用する。
過去に開発された技術は、使い勝手だけが生き残り、それで目的を達することを技術者も認識すべきだろう。

                 

    高速鉄道は、北京~天津間がはじめて2008年に開業         高速鉄道網計画

 

大きな発展続く内蒙古とも交流

内蒙古自治区は人口2400万人、蒙古民族は20%弱である。日本技術士会近畿支部は30年にわたり、首都のフフホトと技術交流している。
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月に派遣された日本技術士会の訪中団は、北京からフフホトまで650kmを夜行列車で移動した。明け方には、約10分ごとに石炭などの資材を積んだ長大な貨物列車とすれ違う。寝台車の窓からは電柱が見えないので、単線のディーゼル車と思ったが、複線電化だった。
型鋼の量産型電柱は右側にあり、ここから腕を伸ばして2つの線路上に電力を供給していると見られる。日本では考えられない簡素なシステムだ。

   

    北京~フフホト間の鉄道(片方だけ電柱から腕を伸ばして電力を供給)

この内蒙古は資源の宝庫であり、動きの激しい中国にあって経済成長率は8年間連続して16%程度とトップを維持。1人当たりのGDPは第7位(上位は上海、北京、天津と沿海部の省)に位置する。訪中団のメンバーのなかには、この事実を知らず情報不足と認識不足を痛感した者もいた。

国家戦略の要諦は国際競争力にあり

今回、訪中団は中国側の厚意で上海万博の中国館を見学した。見学コースで最初に見る大画面での国家建設の映像には、勇気付けられた。次に30年前から10年毎の生活シーンの変化の展示を見た。同国発展の歴史は、1978年の改革開放が実質的にスタートといえるが、実に変化のスピードが速いことがわかった。
同国は、地球環境問題について、20年までに二酸化炭素(CO2)排出量を、GDPあたり4045%削減する取組みを進めることが、見学者の心にストレストレートに響く。
日本のマスメディアには、中国はCO2削減に協力的でないと非難めいた論調を耳にするが、実効性の高い計画に見える。

上海では市内の電力の20%を供給している郊外の石炭火力発電所を見学した。十数年前の1期建設には、高さ240mの煙突による対策が行われ、脱硫施設はなかった。現在の3期工事では脱硫施設を導入。また、維持管理などの経験を積み、独自技術の開発により、世界最高水準の発電効率を達成したという。
同国インフラ整備の急激な進展について、日本と政治体制や資金調達方法異なることを理由にあげる人が多い。だが、グローバル化を見据えた国家戦略の策定は国際競争力になり、現在の日本に不足していることを認識する必要があるだろう。

編集協力日本技術士会近畿支部環境研究会

>>>次号  3)地域の役割分担と推進計画を明確に(関西には目標が見えない)

 

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