1)中国でのめざましい都市建設に学べ

著者: 環境研究会 講演者: 環境研究会  /  講演日: 2010年08月05日 /  カテゴリ: 連載記事(フジサンケイビジネスアイ)  /  更新日時: 2012年10月12日

 

フジサンケイビジネスアイ 連載記事

関西を元気に! 

掲載日  2010.08.05

技術士の提言-1

中国の都市建設に学べ

長期計画で進むインフラ整備

中国の経済成長が著しい。上海や北京の巨大都市では更地に絵を描いて、計画通り実行・推進できる環境にある。中国では土地が国有であり、計画を実行しやすい側面があるのは事実として、建設の計画性、効率性、スピードなど見習うべきことが多い。

行政単位が広く意思決定しやすい。上海市は6000km2、北京市は17000km2あり、広域の長期計画の基にインフラ建設・整備を推進している。 ちなみに大阪府は2000 km2、兵庫県は6000 km2でそれぞれ上海市の1/31/1である。

周辺部は未開発で建設を進めやすい。街中の老朽化した低・中層住宅を取り壊して、再開発する場合、道路や鉄道を敷設すると、周辺部は付加価値の高い中・高層住宅地・都市に変貌していく。

  例えば、上海市は10数年前に地下鉄は1号線、2号線だけが開通していたが、2010年現在総延長420kmと東京を抜いて世界一である。さらに2020年には、周辺部の整備により総延長810kmの鉄道建設が国の承認を受けて進みだした。

上海市東部の浦東国際空港に続き、西部に虹橋国際空港が拡張整備され、地下鉄が市内に直結した。さらにここを基点として、蘇州、無錫、南京へと時速350kmの新幹線が開通した。近い将来には北京に直結する。

計画推進は、自治体だけでなく、大学なども深く関与し、これを支援している。

以上のことは、6月の()日本技術士会第16次訪中友好交流団を通じて、明らかになった。

 中国・高速道路の供用延長の伸び
1988年に供用開始し、4600km/年で延長している。1999年に日本を超え、2007年に53,600km(世界第2位)になった。
→最終目標は8km

 

  

上海虹橋新駅(万博会場での模型)
国際空港に隣接し、新幹線(時速350km)が開通した。
  (16のホームと30の線路)

 

活発化する技術士会の訪中交流

大阪市は1974年、大阪府は1980年に上海市と姉妹都市提携を結び、環境対策など技術支援等の交流を続けてきた。技術士会近畿支部の友好訪中団も1986年に第1次がスタートし、今回第16次の訪問地である上海、北京、天津(神戸市と姉妹都市)、フフホト(内蒙古自治区の首府)などと緊密な関係を作っている。この間、上海との科学技術交流会を昨年大阪で開催するなど頻繁に交流している。

発展著しい中国と、閉塞感が漂う日本との違いがどこから来るのかに留意し、学ぶべきことは学ぶ必要がある。とりわけ関西地域が計画的に広域建設・整備計画を立て、地域及び国の承認を受けて推進・再生を図ることで、中国とのパートナーシップを維持する必要がある。

求められる広域的な視点

東京圏、大阪圏は世界有数のメガリージョンとして、早くから鉄道網を始めインフラ建設が進んできた。しかしながら、グローバル化、情報化が進展する中で、国内マーケットだけでは経済活動は成り立たなくなった。中国をはじめ東南アジアは経済成長の中で都市も変貌しつつある。マーケットを国内に留まらず、広域で考え、競合に打ち克つために戦略を立て、中国などの開発スピードと低コスト化に対抗できるシステム・基盤を再構築する必要がある。 

関西は1960年代の高度成長期に都市化が進展した。また、この時期に名神高速道路や阪神高速道路の整備が進んだ。わが国の人口はすでに減少傾向に転じ、関西都市圏での人口増加は終わった。一方で高速道路等のネットワーク整備は遅々として進んでいない。

技術士会はものづくり、エンジニアリングの高度な専門家集団であり、企業で定年を終え、第二の人生を社会に貢献する意欲とポテンシャルを持っている。関西再生に向けて、技術士からの情報発信をシリーズで取り上げていく。

編集協力日本技術士会近幾支部環境研究会

 

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