5)技術士集団をシンクタンクに
著者: 環境研究会 講演者: 環境研究会 / 講演日: 2010年10月07日 / カテゴリ: 連載記事(フジサンケイビジネスアイ) / 更新日時: 2012年10月12日
フジサンケイビジネスアイ 連載記事
関西を元気に!
掲載日 2010.10.07
技術士の提言-5
技術士集団をシンクタンクに
関西・近畿地方は、千数百年の問、政治・文化の中心として発展してきた。また、京阪神および堺市を擁する多核都市で、世界有数の大都市地域でもある。経済規模は国内の6分の1を占め、国内総生産(GDP)はカナダ1国に相当する。産業構造はバランスが取れており、大学などの知的生産も集積している。
近年、有力企業の本社機能が東京に移り、東京一極集中の政治。経済構造のなかで、東京圏に対抗する存在から、一地方に地盤沈下してきた。
経済規模の拡大、交通・通信など技術が進展するなかで、都道府県は行政単位としては小さすぎる。一方、大阪市など4つの政令指定都市は基礎自治体としては力がありすぎる。グローバル化で厳しい競争に打ち勝つため、利害を調整し、広域的に考えるには、今の行政単位では機能しない。
「ゆで蛙(かわず)」のたとえがある。鍋の中の蛙は、長い間ぬるま湯につかり、居心地がよかったが、じわじわと鍋の下から加熱されると、ゆで蛙となって死ぬ。
関西は「ゆで蛙」であり、危機を自覚すべきだ。一度に変われるわけではないが、広域的に考え、高速道路などのインフラについて何が問題で、どうすべきかを考える必要がある。
全国7万人の技術士
ところで、技術士制度は60年近い歴史があり、法律による国家試験に合格した有資格者が7万人いる。技術士は工学部等技術系の最高の資格だ。建設部門が全体の半数以上を占めるが、機械、電気・電子、化学、環境など20部門にわたる技術者が、高度な専門的な知識・経験をもとに企画、調査、分析、評価する能力とネットワークがある。
とくに、総合技術監理部門はマネジメント能力を備え、20技術部門技術士の上位に位置づけられている。
技術土は知的好奇心が高く、社会に貢献する意欲も強い。日本技術士会では、技術士が高度な倫理観と専門的能力を持ち、社会に貢献し、常に情報発信することに努めているが、実社会では技術士についての認識、評価は高くない。具体的な活動の成果が見えないし、行動、情報発信のさらなる工夫が必要だ。
そこで、「知る権利」と「学ぶ義務」の機能を働かせ、政策 技術士は現役として企業内で形成につなげるために必要な技術情報を、分かりやすく発信するホームページ「Technol og y PE‐eco」を開設した。PEはプロフェッショナルエンジニア、技術士のこと。Ecoはエコノミー(経済)エコロジー(環境)。
広いネットワーク
技術士は現役として企業内で活躍中の人も多いが、対外活動の主体は企業などで現場実務を経験した定年退職者だ。技術土には
①幅広い達成経験がある
②企業などのOBとして発言しやすい
③広いネットワークなどがある。
課題をいかに計画し、解決したか、今後どうすべきか、技術者の実践能力と問題解決能力が必須だ。現役の場合、利害関係を伴うため、発言しにくい場面が多いがOBであれば、大所・高所から発言しやすい。技術士はスキルアップが求められるため、技術士会内部の活動を通じて情報と人のネットワークを常に広げようとしている。
ただ、これまで技術土は個人の知見を生かす業務依頼が中心だった。これからはチームとしての技術者集団に、シンクタンク機能が期待される。
OB技術士は経済的な裏づけがあれば、能力と意欲のある、良質で安価なシンクタンクになり得るのは確かだろう。
編集協力/日本技術士会近畿支部環境研究会
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