8)阪神高速道路の抜本的な見直しを
著者: 環境研究会 講演者: 環境研究会 / 講演日: 2010年11月18日 / カテゴリ: 連載記事(フジサンケイビジネスアイ) / 更新日時: 2012年10月12日
フジサンケイビジネスアイ 連載記事
関西を元気に!
掲載日 2010.11.18
技術士の提言-8
阪神高速道路計画の抜本的な見直しを
阪神高速道路、近畿自動車道、中国自動車道、山陽自動車道、神戸淡路鳴門自動車道が都市間高速道路に位置づけられている。一方、都市内の高速道路は、人口が密集する阪神間と一部京都を含む地域に阪神高速道路株式会社が建設、運用している。
阪神高速は1964年、首都高速道路とほぼ同時期に運用が始まった。現在の総延長は265km(一部建設中を含む)。これは首都高速の80%に相当し、経済規模からみると、手厚い整備といえるだろう。
阪神高速は大阪、神戸、京都の4カ所延べ30キロで建設が進んでおり、総額約1兆円をかけて2020年までに開通する。
だが、これで完成ではなく主要計画はまだ3カ所ある。これは「ミッシングリンク」と呼ばれ、解消に向けて協議会が発足し、国に整備を要望しているが「コンクリートから人へ」の流れの中、費用効果を明確にしないと整備の見通しは立たない。
まず合意形成が必要
建設中の道路で、たとえば大和川線は14年に開通すると、湾岸線からの車がスムーズに大阪市内を回避して近畿自動車道など都市間高速に通じる。
大阪市内の中堅運送会社にヒアリングしたが、関係者は誰もこのことを知らなかった。淀川沿いに大阪市内を迂回できる淀川左岸線は、環境アセスメントが完了して20年近くたつが、住民の反対は今も続く。膨大な時間と費用をかけて20年までに完成しても、都市間高速道路には接続しない。
ネットワークが脆弱で、都市間高速道路との接続のために慢性的に渋滞に巻き込まれる。
しかし、少子高齢化の中で、都市間高速道路と、都市内交通量の増加は、あまり考える必要がない。まして、膨大な費用と10年以上先でしか実現が期待できない今後の計画は、いったん白紙に戻して、費用効果と、建設スピードを考慮して再構築すべきである。
効果とスピードを最優先
新規に優先すべき道路整備は2つ。
1つ目は、名神高速と湾岸線の接続だ。阪神港が京浜港とともに国際コンテナ戦略港湾に指定された。日本の「ハブ港湾」として機能させるには、大型のコンテナ貨物(長さ6mと12m)をスムーズに都市間高速道路に運ぶ必要がある。わずか4kmで接続できる高速道路は重要だ。難しさがあるとしても最優先すべきである。
2つ目は湾岸線の西への延伸である。湾岸線は、明石海峡大橋につながる垂水ジャンクションに接続する計画だが、今後10年間では開通しない。神戸山手線は今年度、阪神高速・湊川インターチェンジまで開通するので、湾岸線から西方向への延伸は接続によって所期の目的は達成される。
3大都市圏で湾岸線が未完成なのは、関西だけ。開通すると慢性的な神戸線の渋滞対策としても有効である。
理屈の上では、淀川左岸線の東側への延伸および湾岸線の西側への延伸は必要だが建設時間、効果を考えると凍結、白紙撤回が妥当だ。
グローバル化、低成長、国際競合、地域競合の激化の中で、「集中と選択』の方針に沿って、重点化が必須である。地域自らが考え、決断することが重要で、見直しの結果、10年後に計画検討するものは止めてもよい。事実に基づく的確な選択をすべきである
編集協力/日本技術士会近畿支部環境研究会
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