12)メガトレンドに適応し関西の自立複権を

著者: 環境研究会 講演者: 環境研究会  /  講演日: 2011年01月20日 /  カテゴリ: 連載記事(フジサンケイビジネスアイ)  /  更新日時: 2012年10月12日

 

フジサンケイビジネスアイ 連載記事

関西を元気に! 

掲載日  2011.01.20

技術士の提言-12

メガトレンドに適応関西の自立復権を

わが国は「失われた長い20年」の中で、雇用・労働時間が縮小し年収200万円以下の低所得層が400万人も増大した。一方、世界的には中国をはじめ東南アジア、インド等新興国の経済成長がめざましい。メガトレンドに適応していく努力、内輪の論理に振り回されない転換・変革が必須である。

わが国は65歳以上が占める人口の割合が21%以上の超高齢化社会に突入、年々医療費は億円以上増加する。人口減少の中で、新卒者の就職難が続くと、教育システムは瓦解する。国は最低限の生活の安心が得られる社会に向けてのビジョンと仕組み・工程を明示し、国民に受け入れられないと、消費税率引き上げなどによる財政再建は実現できない。

産業界では東南アジアなど世界を視野に入れた事業の再構築が迫られている。スマートフォンなどの情報ツールの普及と情報の同時共有も進んでいる。
国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)では、米国や中国を含む方向付けへの合意が進んだ。二酸化炭素 (CO2)排出抑制に向けた技術開発、産業変革の流れは止まらない。

変化に対応する3つの視点

関西は変化に適応する努力を惜しんではならない。以下に3つの視点を述べる。

第1は広域的、長期的に俯瞰し検討する仕組みの構築と運用である。何が問題かを明確化し、「選択と集中」の中で情報発信し、地域の合意形成を目指すべきだ。

第2に合意形成のための良質な情報発信とその共有である。技術士は技術情報を分かりやすく発信する責務がある。20世紀の100年間で情報量は1000倍に増大したといわれる。重要な情報について「知識の構造化」を図り、社会の意思決定、合意形成を支える必要がある。地域のシンクタンクとして、得意とする専門分野での知見を積極 的、具体的な提言とし、政策形成に寄与したい。

第3は時間(スピード)と費用(コスト)の重要性。価値工学(バリューエンジニアリング)の研究・応用は1950年ころから米国で発展してきた。価値 効果/費用 効用/犠牲ととらえ、時間ロスによる犠牲を抑制、付加価値の高い機器・システム、サービスを実現する手法である。

国内市場が縮小する中で、海外進出のために、ざっくりいって30%の合理化(価値改善)が必須になる。
第2京阪道路は延長30kmの建設に40年かけて建設費1兆円を要した。今や中国などでは500kmの高速鉄道を5年、1兆円で実現できる。
成熟化社会では、直接の利害関係者に振り回されないデータ蓄積、技術基準に基づく信頼・共感を呼ぶ丁寧な説明が必要だ。騒音対策などは、地域社会に対して日頃から必要性、効用、対策事例などを十分に周知し、住民の不安に応える努力を惜しんではならない。

関西の強みを掘り起こせ

中部地区のGDP(国内総生産)は関西に肉薄し、インフラについては、高速道路、港湾、空港とも整備が進み完成レベルにある。だが関西の「地域力」は中部より上にある。飛行機の幹線ルートである北海道(新千歳)及び沖縄(那覇)への旅客数は中部の2倍だ。

主要3地域のGDP比較

 

  関西からの長距離旅客数は中部からの2倍

 

人口が減少し始めたからこそ、関西の強みを生かしたい。首都圏に次ぐバランスの取れた経済規模、世界に通用する歴史的観光資源がある。ゆったりとした温暖な気候、自然風土は関西だけが持つ財産。伝統的に新しいものを生み出してきたDNA復活は可能である。

日本技術士会近畿支部環境研究会では「PE-eco」というホームページを昨年秋に開設し、今回のシリーズ記事を掲載・情報発信している。長い準備期間もあって、1100件のアクセスがある。これを育てつつ、関西の自立的復権に向けての活動に参画・貢献できることを願っている。

 =おわり

編集協力日本技術士会近幾支部環境研究会

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